Michelle KoebkeによるPixabayからの画像
バイデン米大統領は7日(日本時間8日)、アメリカの上下両院合同会議で、一般教書演説を行った。バイデン大統領は、
「中国との競争に打ち勝つため、われわれは結束しなければならない」
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と呼びかけ、与野党が協力して中国に対峙する必要性を呼びかけた。
バイデン大統領の一般教書演説は、今回で2回目。しかしながら、野党である共和党が議会下院の多数派を掌握する「ねじれ国会」では、初めて。
バイデン氏は3月にも再選への出馬を表明するとみられており2、演説では終始、内政面の成果を強調、支持率の上昇を図る。またバイデン大統領はアメリカ本土を横断した中国の偵察気球を撃墜したことについて、
「中国がわれわれの主権を脅かせば、国を守るため行動する。そして行動した」
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と強調。続いて、習近平国家主席に対し、
「衝突ではなく競争を求める」
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と伝えたとし、
「米国と世界に利益をもたらす場合は協力する」
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とも述べた。今月の24日でちょうど1年を迎えるロシアのウクライナ侵攻については、
「北大西洋条約機構(NATO)を結束させ、世界的な連合を構築できた」
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とアピールした。
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一般教書演説の要旨
(経済問題)
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米国の物語は前進と強靭さの物語だ。2年前、経済がぐらついた。今夜までに、われわれは記録的な1200万人の雇用を生み出した。
(コロナ禍)
今日、新型コロナウイルス感染症がわれわれの生活を支配することはもはやない。われわれの民主主義は2年前、南北戦争以来で最大の脅威に直面した。傷ついた、今も不屈だ。
(与野党の結束)
民主党と共和党は共に働けないと指摘されるが、この2年間はそれが誤りであることを証明した。前回協力できたのなら、新たな議会で協力できない理由はない。
われわれは超党派で半導体投資法を成立させた。米国のサプライチェーン(供給網)は必ず米国で始まるようにする。
超党派で団結してインフラ投資法案を可決した。連邦政府のインフラ事業では、すべて米国製造資材の使用を義務付ける新たな規則を発表する。
(ウクライナ問題)
プーチン(ロシア大統領)による侵攻はわれわれの時代、米国、世界にとっての試練だ。われわれは北大西洋条約機構(NATO)を結束させ、世界的な連合をつくりあげた。ウクライナの人々に寄り添ってきた。必要とされる限り、あなたたちに寄り添う。
(中国)
私は(中国の)習近平国家主席に、われわれが望んでいるのは衝突ではなく競争だと明確に伝えた。国益を向上させ世界に利益をもたらす領域では、中国と協力する。
しかし、もし中国が米国の主権を脅かせば、守るために行動する。そしてわれわれは行動した。中国との競争に勝つには、結束しなければならない。
一般教書演説とは
一般教書(State of the Union Address)とは、予算教書(Budget Message of the President)と大統領経済報告(Economic Report of the President)並ぶ三大教書と呼ばれるもの。
合衆国憲法は、大統領に対し、随時、連邦の状況(state of the union)についての情報を提供しなければならないと定めている。これに基づき行われるのが、一般教書演説だ。
一般教書演説は正副大統領でなく、連邦議会上下両院のほぼ全議員、連邦最高裁判所、閣僚、統合参謀本部の将官という、三権と軍の重要人物が一堂に会する。
ただ、演説中に議事堂が爆破されて重要人物が全滅してしまう事態を避けるために、上院仮議長(副大統領、下院議長に次ぐ第3順位の承継権を持つ)と、閣僚一人、最近では上下両院の議員各党1人ずつが指定生存者として別の場所で待機するという慣行がある。
厳格な三権分立をとるアメリカでは、一般教書演説で表明された内容がそのまま法律で実現される可能性は低い。とはいえ、議会も大統領の意向を無視するわけにもいかない。
自分たちが通過させた法案を大統領が拒否した場合、それを乗り越えた法案を可決させるには、上下両院で出席議員の3分の2以上の賛同を得なければならない。
そのため、年に一度、通例2月の大統領が行う一般教書演説は、行政機関と立法機関の調整・議論を深化させることを目的とする、大統領が発すシグナルでもある。
与野党結束を呼びかけ 共和党は対決姿勢鮮明
バイデン大統領は一般教書演説において、就任後2年間の実績をアピールし、2024年の次期大統領選への再選出馬に意欲を示す。ただ、昨年11月の中間選挙で野党共和党は多数派を奪還、対決姿勢をみせる。
そのため、今後の議会運営は厳しさを増す。
バイデン政権はこれまでの任期2年間、深刻な与野党の対立や支持率の低迷に苦しみながらも、インフラ投資法や半導体投資法、銃規制の関連法を超党派で成立。
しかしながら、昨年の中間選挙で与党の民主党は下院で過半数を失い、「ねじれ」が生じた。そのため、新たな法案可決は極めて困難に。
対する共和党は、次期大統領選に向け、バイデン政権と厳しく対峙する構え。その中でも、とくにトランプ前大統領を支持する保守強硬派は、「政権の失政」を厳しく追求すると宣言している。
バイデン氏が副大統領時代の機密資料や私邸や個人事務所に持ち込んだ問題などについて、議会で調査する方針だ。
バイデン氏は、近く次期大統領選挙への出馬を正式に表明する可能性。ただ、80歳という高齢が懸念され、世論調査では民主党支持者の大半が、「再選出馬を望んでいない」と回答。
そのため、民主党内がバイデン支持で結束できるかは、不透明だ。