麻生太郎VS武田良太  北九州市長選挙は2人の福岡選出国会議員の”政争の具”と化す 市民不在 相次ぐ保守分裂選挙

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John MounseyによるPixabayからの画像

 2月5日に投開票された北九州市長選(福岡県)は、無所属で新人の元厚生労働省職員の武内和久氏(51)が、元国土交通省職員の津森洋介氏(47)ら無所属新人の3人を破り、初当選した。16年ぶりの市長交代となる。

  津森氏は、自民、立民、公明、国民民主が推薦。与野党の相乗りとなり、全面支援を受けた津森氏の敗戦は各党にとって誤算となった。

  選挙は、政党の推薦を受けない武内氏が、現職の市長や与野党が相乗りした候補に勝利する異例の結果に。人口の流出が続く市、あるいはコロナ禍で閉塞感が漂うなか、武内氏が「変化」を求める有権者の受け皿となる形に。

  西日本新聞が行った出口調査では、武内氏が無党派層の5割超を取り込んだだけでなく、自民党支持層の4割超、立憲民主支持層の5割超も流れる1

  落選した津森氏は、連合福岡、商工団体などからも幅広く推薦を得て分厚い陣営を構築。

 国とのパイプを生かした経済浮揚策を訴えるものの、相乗りを前提に、かつ自民党や旧民主党系の市議会派が候補者を選び津森氏に出馬要請した過程は、

 「密室政治」

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 と批判される。さらに告示前の公開討論会を相次いで欠席したことも汚点となり、支持を広げることができなかった。

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“大連立“ 不協和音 結束にひび 公開討論会の欠席も裏目

 

 選挙の情勢は津森氏の

 「楽勝ムード」

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 でスタートしたものの、しかし武内氏が展開した

 「政党対市民党」

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 というイメージが功を奏し、与野党相乗りの

 “大連立“

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 は迷走する。

  そもそも

 「負けるはずがない」(旧民主党系市議)

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 選挙だった。津森氏は、政党・団体の推薦を受け、なおかつこれまでの市長選で毎回20万票前後を獲得してきた北橋健治氏(前市長)が並び立つ。

  1月上旬に行われた情勢調査では、

 「ダブルスコアで津森氏優勢」

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 と余裕が漂う。しかし大所帯の歯車が徐々に狂っていく。

 旧民主党系市議は、

 「選挙の手の内は明かせない」

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 としたり、

 「士気が下がる。うちも一枚岩ではない」

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 と自民党市議はこぼす

  1月には決定的な「オウンゴール」が。

  津森陣営は「メリットがない」との判断で各種の公開討論会を欠席。ところが1月18日、民放の討論会で「不参加」の札がぶら下げられた津森氏の上半身パネルが‘映されると苦情が殺到し、対応に追われた。

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 麻生太郎VS武田良太  市長選挙なのに? 市民不在の政争の具と化す

  
 そもそも、市長選うんぬんよりも選挙の場が2人の国会議員の“代理戦争“と化している。

  福岡県内の主要な選挙の場合、必ずといっていいほど、自民党内のこの2人の争いが勃発する。副総裁の麻生太郎氏と元総務相の武田良太氏だ。2人とも福岡県選出の衆院議員だが、「犬猿の仲」と言われるほどその対立は激しい。

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  最初に立候補を表明した武内氏は、2019年に行われた福岡県知事選で麻生太郎氏が擁立。しかし武内氏は武田良太氏が支援した候補に敗れる。

 今回の北九州市長選でも自民党が推薦する津森氏の擁立には、武田氏が関わったとも。

  他方、自民党福岡県連として津森氏を推薦するという承認の署名について、麻生氏は断った12

  麻生氏と武田氏の不仲は、永田町での力学にも影響する。麻生氏は現在、派閥の会長として茂木派とともに岸田文雄首相を支える主流派だ。

 しかし、菅義偉前首相の時代は、武田氏が所属する二階派会長の二階俊博氏が幹事長として力を発揮し、武田氏も総務相として重用された。そうした因縁もある。

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保守分裂相次ぐ地方選挙 統一地方選のゆくえは?


 今回の北九州市長選挙だけでなく、ここ最近、各地の首長選において、自民党が候補者を一本化できない「保守分裂」の選挙がつづく。

  北九州市長選では、自民党が事実上の分裂選挙となり、自民が推薦した元国土交通官僚の津森氏が、元厚生労働官僚の武内和久氏に約1万4000票差で競り負ける。

  麻生太郎氏は今回、津森氏の推薦を承認する党本部の文書に署名せず、結果、自民市議の一部や麻生系の地元経済人は武内氏を支援する“分裂”に。

  北九州市長選だけでなく、春の統一地方選の奈良と徳島の県知事選(4月9日投開票)でも自民党内が分裂する形に。6月4日に投開票をむかえる青森県知事選も、”分裂‘の可能性が。

  分裂選挙は自民党内にしこりが残る可能性をふくみ、また今後の国政選挙への影響を懸念する声もある。保守分裂選挙は野党が弱い「保守王国」で多く見られるだけに、余計に自民党内”ふがいなさ”が目立つ。

  愛知学院大の森正教授(政治学)は、読売新聞の取材に、

 (分裂選挙は)「自民の活力になる面もあるが、しこりを引きずることになれば、国政選のような『党対党』の戦いでは不安要素になる」

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とする。

  1. 村田直隆「既存政治の不信 受け皿に」西日本新聞、2023年2月6日付朝刊、1項
  2. 村田直隆、2023年2月6日
  3. 村田直隆・笠原和香子「結束ひび、不協和音」西日本新聞、2023年2月6日付朝刊、21項
  4. 村田直隆・笠原和香子、2023年2月6日
  5. 村田直隆・笠原和香子、2023年2月6日
  6. 村田直隆・笠原和香子、2023年2月6日
  7. 村田直隆・笠原和香子、2023年2月6日
  8. 村田直隆・笠原和香子、2023年2月6日
  9. 村田直隆・笠原和香子、2023年2月6日
  10. 村田直隆・笠原和香子、2023年2月6日
  11. 今西憲之「仁義なき市長選 終わらぬ麻生太郎氏vs武田良太氏 北九州市を舞台に繰り広げられる因縁対決の行方は〈dot.〉」AERA dot、Yahoo!ニュース、2023年2月4日、https://news.yahoo.co.jp/articles/02a852ec82b687beedb0cc4622282fb0c4c5a540?page=1
  12. 今西憲之、2023年2月4日
  13. 今西憲之、2023年2月4日
  14. 読売新聞オンライン「統一地方選、首長選で「保守分裂」相次ぐ…自民党が候補一本化できず」2023年2月23日、https://www.yomiuri.co.jp/election/local/20230222-OYT1T50373/
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