麻生太郎氏、また問題発言 ルッキズム(外見至上主義) エイジズム(年齢差別) 少ない女性議員の状況が差別を生み出す

ジェンダー
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JanによるPixabayからの画像

 自民党の麻生太郎副総裁が、上川陽子外相について、

「そんなに美しい方とは言わけれども」

などと発言したことが波紋を呼んでいる。

 発言は上川氏の外交手腕を評価する文脈で出たことであったが、

「女性差別の姿勢が見て取れる」
「今までの(麻生氏の)暴言の中でも最悪」

1

との批判が広がる。

 発言は1月28日、福岡県芦屋町での講演の中で出た。麻生氏は、

「俺たちから見てても、このおばさんやるねえと思った」

2

と述べて、

「そんなに美しい方とは言わんけれども、英語できちんと話をし、外交官の手を借りずに自分でどんどん会うべき人に予約を取っちゃう」

3

などと語る。

 このことについて、ライターの望月優太さんは朝日新聞の取材に対し、

「俺たちから見てても、このおばさんはやるねえと思った」

という部分に着目し、

「『俺たち』が女性たちを評価するという構図が、当然の前提になっている」

4

とし、

「女性の登用をうたいながらも、実際に誰を引き上げるかを決める権力はいまだに男性たちが握り続けている現実も映し出している」

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と分析する。

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背景

・麻生氏の発言内容6

 俺たちから見ても「ほ~このおばさんやるね」と思いながら、この間ニューヨークで(上川氏に)あったけれど、少なくともそんなに美しい方とは言わんけれども、外交官の手を借りなくて「私はやるからいい」って、自分でどんどん会うべき人たちは自分で予約を取っちゃう。

 あんなことができた外務大臣は今までいません。新しいスター新しい人がそこそこ育ちつつあるんだと思いますね。

・麻生氏の今までの主な問題発言7

【外相時代】

2007年7月
日米の米の価格差を比べて、講演で、

「アルツハイマーの人でもわかる」→撤回

【副総理兼財務相時代】

13年1月
社会保障国民会議で、終末期医療に触れるなかで、

「さっさと死ねるようにしてもらうとか、いろんなことを考えないといけない」→撤回

13年7月
シンポジウムの中で、

「ある日気づいたら、ワイマール憲法がナチス憲法に変わっていた。だれも気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」→撤回

18年5月
財務省の前事務次官のセクハラ問題をめぐり、記者会見で、

「セクハラ罪という罪はない」

19年2月
少子化問題に絡み、国政報告会で、

「年を取ったやつが悪いみたいなことを言っているが、子どもを産まなかった方が問題」→撤回

20年1月
日本について、国政報告会で、

「2千年の長きにわたって一つの民族が続いている国はここしかない」→訂正

【自民党副総裁時代】

22年7月
街頭演説会で、
「弱い子がいじめられる。強いやつはいじめられない。国もおんなじよ」

ルッキズム(外見至上主義) エイジズム(年齢差別)

 麻生氏の発言は、地方議会を含め、政治の場でルッキズム(外見至上主義)やエイジズム(年齢差別)に基づく発言が後を絶たないこと実情の中で生まれたもの。

 昨年12月8日に開かれた三重県議会の予算決算常任委員会で、鈴鹿市選挙区選出で新政みえ会派の平畑武議員が、11月のイベントで女子高校生が作ったスイーツを試食したことを振り返り、

「女性もすごくきれいな2人で、100点だと思いました。そのあと、一見知事がスイーツを食べながら一生懸命リポートされたが、35点だった」

などと発言8

 あるいは、昨年4月の福岡県飯塚市議選で日本維新の会公認候補として初当選した藤間隆太議員(35)が男女共同参画に関する市の啓発方法に関し、女性議員(57)を名指しし、セーラー服を着てPR動画を投稿すれば効果的という趣旨の発言をした9

 古くは、2001年に東京都知事だった石原慎太郎氏が、

「文明がもたらした最もあしきものはババア」
「女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です」

と述べたのだが、日本はこの時代からなお変わっていない。

少ない女性議員の状況が差別を生み出す

 東京大学の瀬地山角教授(ジェンダー論)は、朝日新聞に対し、

「上川氏を評価しているのは分かるが、男性の外相についてであれば、容姿に言及することはない。女性だけ美醜の評価が付け加えられる。女性が社会で生きていくうえでのしんどさがうかがえる発言だ」

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と述べる。

 また昨年9月には、上川氏ら5人の女性が閣僚に就任したが、岸田文雄首相のその際の、

「女性ならではの感性や共感力も十分発揮していただくことを期待したい」

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と発言した問題と共通性を指摘、

「政治の世界で、女性はアウトサイダーだという認識があるから、男性政治家から『俺たちから見て』『女性ならではの』といった発言が出てくる」 

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とする。

 世界では、政治分野の男女格差を解消するために、一定以上の女性候補者を指名するクオータ制などが取られてきた。この制度はノルウェーの政党が1970年代に最初に導入。

 フランスではパリテ法により、各政党が男女同数の候補者を立候補させることが義務付けられており、違反すると政党助成金が減額される措置も。

 しかし、日本は18年に施行した「候補者男女均等法」で女性候補の擁立を促進しているものの、罰則がなく実効性に欠ける。

  1. 二階堂友紀・松井望美「容姿言及 麻生氏に批判」朝日新聞、2024年1月30日付朝刊、25項
  2. 二階堂友紀・松井望美、2024年1月30日
  3. 二階堂友紀・松井望美、2024年1月30日
  4. 二階堂友紀・松井望美、2024年1月30日
  5. 二階堂友紀・松井望美、2024年1月30日
  6. 三輪喜人「上川外相の容姿に言及」東京新聞、2024年1月31日付朝刊、2項
  7. 二階堂友紀・松井望美、2024年1月30日
  8. 東海 NEWS WEB「三重県議会議員「ルッキズム助長するような発言」」NHK NEWS WEB、2023年12月8日、https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20231208/3000033195.html
  9. 読売新聞オンライン「維新の1年生市議、女性議員名指し「セーラー服着れば動画再生5000回」…市の啓発関連で」2023年5月30日、https://www.yomiuri.co.jp/national/20230530-OYT1T50218/
  10. 二階堂友紀・松井望美、2024年1月30日
  11. 二階堂友紀・松井望美、2024年1月30日
  12. 二階堂友紀・松井望美、2024年1月30日
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