ウクライナのゼレンスキー大統領、フィンランドを訪問 フィンランドはNATO加盟 クレムリン、攻撃か?

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Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、北欧のフィンランドを電撃訪問。ニニースト大統領と会談し、ロシアに対抗するための武器の支援や、4月にNATO(北大西洋条約機構)に加盟したフィンランドとの関係の強化を協議した。

  また同じ日、ゼレンスキー大統領は同じ北欧のスウェーデンやノルウェーなど5カ国の首脳との支援会議に出席。NATOやEU(欧州連合)との連携について申し合わせる。

  ゼレンスキー大統領は3日、フィンランドの首都ヘルシンキ近郊の空港に到着。ゼレンスキー大統領がロシアによる軍事侵攻後、フィンランドを訪問するのは初めて。

  フィンランド放送協会(YLE)によると、ニニースト大統領との会談後の記者会見で、ゼレンスキー大統領は、ウクライナのNATO加盟への意欲を、改めて強調。加盟へと向け、NATOの現加盟国が政治的措置を検討すると望むと伝えた。

  それに対し、ニニースト大統領は、NATOは門戸を開いており、ウクライナについては、NATOは2008年に加盟を確約したとする1

  一方、ドイツに複数のメディアは、ゼレンスキー大統領が今月13~14日にドイツを訪問すると報道。14日にドイツのショルツ首相やシュタインマイヤー大統領と会談、記者会見も行うという。

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クレムリン、攻撃か?

 ロシアの大統領府は3日、2機のドローン(無人航空機)が、首都モスクワ中心部のクレムリン敷地内に墜落したと発表した。大統領府は、ウクライナのドローンがプーチン大統領の公邸への攻撃を試みたと主張、一方、ウクライナは関与を否定する。プーチン大統領は不在で、けが人もいないという。

  ウクライナ大統領府長官顧問のポドリャク氏は3日、Twitterに、

 「ウクライナはもっぱら防衛の戦争を行っており、ロシア連邦の領土の標的は攻撃していない」

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 と投稿、関与を否定した。

  ロシア側の発表によると、ドローンが飛来したのは、3日未明のこと。軍と特殊部隊が電波などを使い、壊したという3。プーチン大統領は予定通りの公務を続けているとのこと。

 ペスコフ大統領報道官は、プーチン大統領はモスクワ郊外の公邸におり、クレムリンには「いなかった」とする。

  ロシア大統領府は、

 「外国からの来賓もある5月9日の戦勝記念日のパレードを前に、大統領の暗殺を狙ったテロ行為だ」

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 と非難した。

  ロシアは5月9日に第独戦勝記念日をむかえ、モスクワのクレムリンに隣接する赤の広場で、プーチン大統領も出席する大規模な軍事パレードが予定されている。

フィンランド NATOに正式加盟

 フィンランドは4月4日、NATO(北大西洋条約機構)に正式に加盟した。NATOへの新規加盟は、2020年3月の北マケドニア以来、31カ国目。フィンランドの加盟により、北欧の安全保障体制は大きく変わるとともに、ロシアは自国への包囲網の拡大を招いた。

  昨年2月のウクライナ侵攻後、5月にフィンランドが加盟申請してからわずか1年足らずの異例の早期加盟。31カ国目の参加で、NATO加盟国とロシアを隔てる国境は2倍にまで拡大した。

 NATOはフィンランドと同時加盟申請したスウェーデンの加盟も急ぎ、防衛力を一段と強化したい構えだ。

  フィンランドの国土は南北に長く、ロシアとは約1300キロにわたり国境を接する。これまでのNATO加盟国の中でロシアと隣接するのは、ノルウェーやバルト3国の一部に限られ、隣接する国境の全長は1200キロほどだった。

  フィンランドの加盟により、ロシアと国境を接する”最前線”が一気に2倍にまで伸びた。フィンランドとともにNATOへの加盟を申請したスウェーデンは、ロシアとは国境を接していないものの、加盟が果たせば、ロシアの西方に位置するバルト海は、加盟国に囲まれた

 「NATOの湖」(英紙)

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 と化す。

 フィンランドの軍事力

  フィンランドのNATO加盟にともない、改めて注目されているのが、フィンランドの軍事力だ。

 フィンランドは、すでにGDPの2%強を国防費に充てており、NATOが加盟国に設定しているGDP比2%強の目標をすでに2014年に達成している。

  フィンランドにとっては、森と湿地に囲まれた約1300キロの国境をロシアから守ることが最優先だ。20世紀の時代には帝政ロシアやソ連に侵略された経験があるため、フィンランド国民の防衛意識は高い。

  フィンランドの年間の軍事予算は約60億ドルで、約2万3000人の常備軍を抱える。さらに国民徴兵制を採用しているため、戦時にはそれを約28万人まで拡大することができる。定期的に訓練を行う90万人の予備役も存在する。

  最近では一部の部隊に戦闘経験があり、少数の兵士がアフガニスタンで、西側連合軍の一員として従軍した6

  「グローバル・ファイアパワー」による世界軍事力ランキングで、フィンランドは世界で51位に位置。

 とくに破壊力のある移動砲(大砲)は、ドイツとフランスを合わせたよりも多く保有し、高度に熟練した小隊の育成に力を入れている。

  1. ロンドン=共同「ゼレンスキー氏 北欧訪問」西日本新聞、2023年5月4日付朝刊、5項
  2. 朝日新聞「クレムリンに無人機攻撃」2023年5月4日付朝刊、1項
  3. 朝日新聞、2023年5月4日
  4. 朝日新聞、2023年5月4日
  5. ヘルシンキ・ロンドン・ブリュッセル=共同「31カ国体制、対ロ国境2倍に」西日本新聞、2023年4月5付朝刊、5項
  6. デービッド・ブレナン「NATOに加盟したフィンランドの軍は対ロシアで頼りになる」ニューズウィーク日本版、2023年4月5日、https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/04/nato-62_1.php
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