第50回G7サミット、イタリアで行われる 影響力衰退 伊メローニ首相、「安全で合法的な中絶」について拒絶 

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Manfred StegerによるPixabayからの画像

 第50回G7サミットが、6月13日から15日までイタリアのプーリア州ファザーノ市のボルゴ・エニャツィアで開催。イタリアのジョルジア・メローニ首相がホストを務め、G7のメンバー国および欧州連合の代表が参加した。
 
 主な参加者は、主要な参加者はイタリアのジョルジア・メローニ首相ほかG7(イタリア、アメリカ、日本、フランス、ドイツ、カナダ、イギリス)の首脳と欧州連合のシャルル・ミシェル欧州理事会議長、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長。
 
 またアルジェリア、アルゼンチン、ブラジル、インド、ヨルダン、ケニア、モーリタニア(アフリカ連合議長国)、チュニジア、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、そしてバチカン市国のフランシスコ教皇が招待される。
 
 サミットでは、ウクライナの主権と領土保全を支持し続けることを再確認。またアフリカの食料安全保障と栄養の構造的障壁に対処し、持続可能で生産的な農業システムを構築するための新しいイニシアチブ「アフリカ食料安全保障イニシアチブ」を発表。
 
 感染症対策としてはパンデミック予防、準備、対応能力を強化するために少なくとも20億ドルの新しい誓約を呼びかけ、さらに 安全で信頼できるAI(人口知能)の推進とリスク管理に関する行動計画も発表された。

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影響力衰退 結束も弱体化

   かつてG7は世界のGDPの約7割を占めていたが、しかし現在では4割台前半にまで減少1。 新興国の成長により、G7よりもG20の方が世界経済の主要な議論の場となり、G7の経済的影響力は相対的に低下する。

  G7が及ぼす影響力も低下し、そのことがロシアのウクライナ侵攻や中国の台頭を招く。

 いまだG7は”民主主義国の集まり”としてその地位を保ち持ち続けているが、グローバルサウス(新興国・途上国)の台頭により、国際政治における発言力も相対的に低下する。

  特にG7は、民主主義と自由の価値を守ることを掲げているものの、しかしこれらの価値観がグローバルサウスや他の国々に必ずしも共有されていない現実がそこにはある。

  G7各国の間でもとくに中国に対する姿勢や問題意識に温度差がある。

  フランスのマクロン大統領は、昨年の広島サミットで、米中対立において「米国の属国ではない」2と強調し、独自の立場を取る姿勢を示した。

 ウクライナ支援においても対ロシア経済制裁や武器供与には限界があり、長期化するウクライナ情勢にどう対応するか、意見が分かれている。

イタリア・メローニ首相、「安全で合法的な中絶」について拒絶

   サミットでは、特に中絶に関する言及が最終声明から削除されたことにも注目が集まった。

  イタリアのメローニ首相は、最終声明から「安全で合法的な中絶」への言及を削除するよう求め、このことがフランスのマクロン大統領やカナダのトルドー首相との間で緊張を引き起こす。

  フランスとカナダは中絶の権利を明確に保証する文言を含めることを強く主張したが、最終的には「包括的な性的および生殖に関する健康と権利」を支持するという一般的な表現にとどまった3

  そもそも、メローニ首相は、この問題についての論争は「作り上げられたものであり、サミット中には存在しなかった」と主張、最終声明から中絶に関する具体的な言及が削除されたことについての批判を否定する4

  一方で、マクロン大統領はこの削除に対して遺憾の意を表明5

  このようなメローニ首相の政治的立場はイタリア国内の保守的な価値観に基づく。 メローニ首相は、イタリアの右翼政党「イタリアの同胞(Fratelli d’Italia)」のリーダーであり、保守的な価値観を強く支持。彼女は中絶に対して否定的な立場を取っている6

ほかAI、脱石炭などが議論に

  ほか、サミットではAI(人工知能)の活用と規制、脱石炭に関する議論が主要に。

  AIの活用とその規制についての議論が行われる。特に、AIの倫理的な側面に関心を持つローマ教皇フランシスコが初めてG7サミットに出席し、AIに関するセッションに参加7

  このセッションでは、AI技術の進展とその規制の必要性について、各国首脳が意見を交換。

  さらに気候変動対策として、ミットでは脱石炭に向けた取り組みも議論。G7環境・エネルギー大臣会合では、2030年代半ばまでに石炭火力発電を段階的に廃止することが合意されるものの、この目標には「各国の経済的・社会的均衡を損なわない範囲で」という条件が付けられた8

  合意は、特に日本やドイツなど石炭依存度の高い国々にとってプラスとなるが、気候活動家からは不十分との批判も9

  そのほかの議題としては、ウクライナ情勢や中国の過剰生産問題、移民問題なども議論。特に中国のEVや太陽光パネルの過剰生産に対する懸念が強調され、G7としての対応が求められた10

  1. 佐藤武嗣「影響力低下し結束できぬG7 冷戦後最悪の核の状況で広島開催の意義」朝日新聞デジタル、2023年5月18日、https://digital.asahi.com/articles/ASR5L5667R5KUTFK01R.html
  2. 佐藤武嗣、2023年5月18日
  3. POLICO「Macron, Meloni clash over abortion rights at G7」2024年6月14日、https://www.politico.eu/article/macron-meloni-clash-over-abortion-rights-at-g7/
  4. Kathryn Armstrong「Italy’s Meloni plays down G7 abortion row」https://www.bbc.com/news/articles/c511x7j9j0eo
  5. POLICO、2024年6月14日
  6. 宋光祐、下司佳代子、牛尾梓「G7声明から消えた「中絶」の文言 舞台裏で繰り広げられた攻防」朝日新聞デジタル、2024年6月16日、https://digital.asahi.com/articles/ASS6H51B5S6HUHBI00WM.html
  7. 日本経済新聞「G7サミット13日開幕 ローマ教皇は「AIの倫理」に関心」2024年6月10日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA041ZK0U4A600C2000000/
  8. Journalism for the energy transition「G7 summit chance for Meloni to make international climate push」2024年6月13日、https://www.cleanenergywire.org/news/g7-summit-chance-meloni-make-international-climate-push
  9. Journalism for the energy transition、2024年6月13日
  10. NHK NEWS WEB「G7サミット【2日目】中国の過剰生産問題 AI活用など議論へ」2024年6月14日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240614/k10014480621000.html
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