【本日のニュース 2025年5月26日(月)】「生徒の声はどこに?」 福岡・柳川市 杉森高の改称決定に浮かぶ子どもの権利と声なき地域の空白

人権
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要約

福岡県柳川市の私立杉森高校が2026年度から「福岡キャリアi高校」へ校名変更を決定。創立1895年の伝統校で、卒業生から反対署名も出ている。新理事長・岩本初恵氏の経営方針に基づくが、企業的手法の導入や生徒意見の軽視が懸念されている。また、日本の学校制度における人権軽視や司法不介入といった構造的問題も指摘せねばならない。

記事のポイント

  • 福岡・杉森高校が2025年度から「福岡キャリアi高校」へ校名変更を決定、卒業生から反対の声も上がっている。
  • 背景には、企業出身の新理事長による経営方針があるとされるが、教育現場への企業手法導入に懸念も。
  • 問題に背景には、生徒の意見反映の不十分さや地域メディアの情報発信力の弱さといった人権・制度的課題も浮き彫りにした。

Summary

Sugimori High School, a private school in Yanagawa City, Fukuoka Prefecture, has decided to change its name to “Fukuoka Career i High School” from the 2026 school year. The traditional school, founded in 1895, has received signatures of opposition from alumni. The change is based on the management policy of the new chancellor, Hatsue Iwamoto, but there are concerns about the introduction of corporate-style methods and disregard for student opinions. It must also be pointed out that there are structural problems in the Japanese school system, such as disregard for human rights and non-intervention in the judiciary.

 福岡県柳川市の私立杉森高等学校は、2026年度から「福岡キャリアi高等学校」へと校名を変更することを決定した。1895年創立の伝統校であり、これまでに多くの卒業生を輩出してきたが、校名変更に対しては卒業生の一部から反対署名が提出されるなど、地域内外で波紋を呼んでいる。

 この方針は、2023年12月に就任した新理事長・岩本初恵氏の経営方針に基づくものとされる1。岩本氏は健康食品・化粧品メーカー「愛しとーと」の創業者であり、民間企業での経営実績を持つ。一方で、企業的なブランド戦略を教育に導入することへの懸念や、長年にわたり地域に根ざしてきた学校名が失われることへの反発も少なくない。

 さらに今回の決定過程については、在校生の意見を十分に反映させたかどうかが問われている。学校運営においては、生徒の意見表明権や自己決定権といった権利の尊重が求められるが、その観点からの議論は十分とはいえない2。また、地域メディアによる報道が限定的であったことから、住民の声が広く可視化される機会が乏しかった点も課題として残る。

 こうした状況は、日本の学校制度が抱える構造的問題とも重なる。たとえば校則による自由の制限や、子どもの権利条約の不徹底など、国際的な人権水準との乖離が長年指摘されてきた3。教育現場に対する司法の関与が限定的であることも、学校が「閉じた空間」として外部からの検証を受けにくい要因となっている。

日本の高校生が置かれている状況

  • 日本の高校生は、国連「子どもの権利条約」第12条で保障されている「自分の意見を表明する権利」が、学校現場において十分に尊重されていない状況にあると指摘されている。文部科学省の調査や国連の勧告からも、生徒が校則や学校運営に関して意見を反映させる機会が限られている実態が浮かび上がっている。
  • 校則や教育活動の意思決定における生徒の参加が不十分なことは、理不尽と感じられる規則の温存につながる恐れがある。これは、子どもの意見表明権の保障という国際的な人権基準と比べても課題とされており、日本はたびたび改善を求められてきた。
  • また、人権教育に関しても、初等中等教育段階では一定の取り組みが進められているものの、高等学校では実施率や生徒の実感が低くなる傾向が報告されている。年齢が上がるにつれて、教育の中で人権を学ぶ機会が減少するという指摘もある。
  • いじめ、差別、外国人やマイノリティに対する偏見といった人権課題に対して、法務省や文部科学省は啓発や救済制度を設けているが、現場での実効性にはばらつきがあり、十分に機能していない事例も散見される。
  • 国際的にも、日本政府は「人権教育のための国連10年」などの枠組みに参加し、国内行動計画の策定や実施を進めてきた。しかし、それらの施策が教育現場にまで浸透しているとは言いがたく、実効性の面で引き続き課題が残されている。

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  1. 「愛しとーと」CEO・岩本さん 学校法人理事長に 柳川・杉森高校 [福岡県]:朝日新聞. (2025). Retrieved 26 May 2025, from https://digital.asahi.com/articles/ASS1Q6WG9S1LTGPB001.html
  2. Child Rights Education~子どもの権利が守られた学校・園づくり~ | 日本ユニセフ協会. (2025). Retrieved 26 May 2025, from https://www.unicef.or.jp/kodomo/cre/
  3. 学校現場における司法の限界と課題」教育法学会誌 第45号、2021年
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