【本日のニュース 2025年5月27日(火)】「博多の女性はきれい」の発言にみる“きれい”の押しつけと消費社会 東京中心主義と地方の記号化 

ジェンダー
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PerlinatorによるPixabayからの画像

要約

国民民主党の榛葉幹事長の「博多の女性はきれい」発言は、外見評価や性別に関する発言の慎重さが問われる現代社会で波紋を呼んだ。背景には日本社会の「美」の価値観や、美容産業による女性の外見への圧力がある。また、地域が通俗的イメージで消費され、政治やメディアによって東京中心に利用されている実態が浮かび上がる。

記事のポイント

  • 榛葉幹事長の「博多の女性はきれい」発言が、外見評価や性別言及としてSNSで賛否を呼んだ。
  • 発言は、日本社会における「美しさ」や地域イメージの消費構造、美容産業との関係を反映している。
  • 地方が通俗的に語られ、政治家が地域の本質的課題(雇用・教育など)に無関心な構造が浮き彫りになった。

Summary

KDP Secretary-General Haruha’s comment that “Hakata women are beautiful” caused a stir in today’s society, where people are cautious in their evaluation of appearance and in their comments about gender. In the background are the values of beauty in Japanese society and the pressure on women’s appearance by the beauty industry. It also reveals the reality that the region is consumed by a common image and used by politics and the media to focus on Tokyo.

 5月26日、国民民主党の榛葉賀津也幹事長がJR博多駅前で「博多の女性はきれいだね。男性はまあまあだね」と発言し、SNSを中心に賛否が広がった。この発言は第一には、軽妙な“つかみ”として発せられたものだが、外見による評価や性別による言及は、現代社会において慎重さが求められるテーマでもある。

 日本社会に独特の、「美しさ」についての価値観がある。とりわけ女性に対しては、美容を通じた“魅力の維持”が経済的成功や社会的評価と結びつけられ、美容産業が巨大市場を形成している。一方で、多くの女性は美容よりも健康や生活基盤の充実に資源を使いたいと考えていることは調査でも明らかであり1、本当に必要なケアが後回しにされる現実もある。

 さらに、「博多の女性はきれい」という言葉に象徴されるように、地域のイメージが通俗的な記号として消費される傾向がある。「博多」はしばしば“華やか”“色っぽい”といったステレオタイプで語られるが、その文化的・地理的実態は多義的で、簡単にひとくくりにできるものではない2

 こうした発言の問題は、単なる言葉の使い方の問題というよりも、そのことよりも地方が東京中心のメディアや政治の文脈で“利用される対象”として扱われるという事実を可視化する。

 あるいは、地方創生という概念をわざわざ持ち出さなくとも、地域においても雇用・教育・医療・福祉というものが確保される当たり前の事実を、政治家が分かっていないことも、そもそも問題だろう。

「福岡」とは? 博多とは?

  • 福岡と博多は、もともと異なる由来と歴史を持つ地域であり、現在の福岡市においても、その文化的背景や地名の違いが一定程度意識されている。
  • 博多は、8世紀ごろから記録に残る日本最古級の港町で、古代から国際貿易や外交の拠点として栄えた。平安時代には鴻臚館が設けられ、日宋貿易や元寇などの歴史的事件の舞台にもなった。
  • 中世以降、博多は「商人の町」として発展し、自由な商業文化や自治の伝統が育まれた。豊臣秀吉による「太閤町割り」で町が整備され、商業都市としての性格が強まった。
  • 一方、福岡は江戸時代初頭に黒田長政が築いた福岡城とその城下町に由来し、「武士の町」として発展。那珂川を挟んで博多と対をなす地域として形成された。
  • 明治時代の市制施行(1889年)の際、市名を「博多市」とするか「福岡市」とするかで論争があったが、最終的に「福岡市」に決定された。一方で駅名は「博多駅」とされ、現在に至るまで主要交通の名称として残っている。
  • 現在の福岡市では、那珂川の東側が博多区、西側が中央区(旧福岡)とされるが、商業地・交通拠点としての「博多」は市全体の中心としても広く認識されるようになっている。
  • 博多は、博多祇園山笠や博多どんたく、博多織といった伝統文化に加え、独自の方言や食文化でも知られ、観光やビジネスの中核地域として発展している。
  • 福岡もまた、城下町の歴史や武士文化の名残を留めつつ、九州最大の都市として現代的な都市機能を備え、政治・経済・文化の中心地として成長を遂げている。
  • 福岡=武士の町・城下町、博多=商人の町・港町という歴史的イメージは、現代にも象徴的に引き継がれており、両地域は「双子都市」として互いに異なる伝統と役割を持ちながら発展してきたといえる。

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