エリザベス女王の国葬、執り行われる イギリスの「威信」再び 一方、安倍元首相の国葬は?  

国際
スポンサーリンク

Pierre BlachéによるPixabayからの画像

 今月8日に96歳で亡くなったイギリスのエリザベス女王の国葬が、19日午前11時(日本時間午後7時)より、ロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われた。

 その光景は、20世紀の世に「終わりを迎えた」であろうイギリスが、21世紀のこの世界に“再び“威厳を示すかのよう。

 イギリスのメディアによると、数十万もの人々が沿道などで追悼。イギリスにおける国葬は、1665年のチャーチル元首相以来、57年ぶり。

 英紙によると、ロンドン警視庁は1万人を超える警察官を配置、単一の行事の警備としては史上最大規模となった1

 またテレビやオンラインなどを通じ、全世界で数十億人が‘国葬の模様を視聴するとの予測も2。イギリス国内では、休日となった。

 参列者は、チャールズ国王などイギリス王室のメンバーに加え、世界各地の王族や国家元首、首脳ら。

 王室は、招待リストを公表してはいないものの、ロイター通信などによると、出席者は2000人ほどで、そのうち外国の要人は約200の国や海外領土からの約500人にのぼる。

 棺は、午後7時半ごろ、昨年4月に亡くなった夫のフィリップ殿下とともに、聖ジョージ礼拝堂の中に納められた。

関連記事→

英エリザベス女王が死去 チャールズ新国王が即位 「ロンドン橋作戦」 一方、旧植民地アフリカ諸国は複雑 

スポンサーリンク

イギリスの「威信」、再び

 エリザベス女王の国葬は各国の要人が集う世紀の大行事となったものの、しかし女王の70年間の治世でイギリスの国力は大きく低下。

 国葬は、これまで築いてきた女王の大きな”遺産”を用い、イギリス威信を再び世界に拡大する狙いが込められている。

「41億人が視聴するだろう」

3

 イギリスメディアは式典を前に、世界人口の実に半数を超える人々が、テレビ中継などで国葬を視聴するとの分析を伝えた。

 これまでの記録は1996年の米アトランタ五輪の開会式。ボクシングの元世界王者であるムハマド・アリさんが聖火台に点火したときの、推定36億人とされる。

 エリザベス女王は戦後まもない1952年に、25歳の若さで即位。以後イギリスは、植民地の独立などで、かつてのような覇権を失う。経済も疲弊し、一時イギリスは、「欧州の病人」とまで呼ばれた。

 イギリスのメディアによると女王即位時にG7(先進7カ国)でアメリカとカナダに次ぐ3位だった1人当たりのGDP(国内総生産) は、2018年には6位にまで低迷。

 しかしイギリスは、2020年末に EU(欧州連合)を完全に離脱。世界規模で、多角的な外交・安全保障戦略を展開しようとする「グローバル・ブリテン戦略」を推進している。

E. DichtlによるPixabayからの画像

安倍氏「国葬」、見劣り不回避


 一方日本では、27日に安倍晋三元首相の国葬が予定されているものの、賛否が分かれている。政府関係者からは、女王の国葬と比べ、

「見劣りしかねない」

4

との不安も聞かれる。

 イギリスでは君主が死去した場合は国葬となり、安倍氏の場合とは単純比較はできない。しかしイギリスでも、在位中の君主の命令と議会の承認があり、「特別な功労者」であれば国葬が可能。

 イギリスでは元首相チャーチル氏らも、国葬で見送られた。憲政史上最長の8年8ヶ月にわたり首相を務めた安倍氏のケースは、これに近いともいえる。

 しかし岸田首相は国会審議を経ずに、安倍氏の国葬実施を閣議決定。そのため安倍氏の国葬をめぐっては世論が二分。

 イギリスでも女王人気は高いものの、王室の廃止を求める声も。相次ぐスキャンダルもあったものの、ただ費用800万ポンド(約13億円)以上(英紙デイリー・ミラー)とも伝えられ国葬そのものへの抗議は一部に限られる。

 参列者の顔ぶれをみても、見劣りしていることは事実。女王の国葬では、日本の天皇、皇后両陛下や各国の王室関係者、バイデン大統領夫妻、フランスのマクロン大統領らも出席。

 一方、安倍氏の国葬では G 7(先進7カ国)首脳で来日するのは、カナダのトルドー首相のみ。

相続資産600億円 支払い免除


 エリザベス女王の個人の純資産は3億約7000万ポンド(約600億円)にのぼるといわれ、不動産や美術品など「遺産」をチャールズ国宝が引き継いだ。

 イギリスでは、君主から直系の君主に承継される資産の相続税は、免除される仕組みがある。

 本来イギリスの法律では、一定額以上の財産を相続する場合、40%以上の税金を支払う義務が発生。

 しかし1993年にメージャー首相が短期間に2人の君主が相次いで亡くなった場合、相続税の支払いで王室が破綻する可能性を指摘。その後、君主の相続税の支払い免除するルールがつくられたという5

 君主の個人資産だけでなく、イギリス王室としても莫大な資産を保有する。ロンドン市内中心部のリージェント・ストリートが代表的で、風力発電所を設置されている。イギリス近海の海底も所有6

 これらを管理しているのが、王室の資産管理団体である「クラウン・エステート」。年次報告書によると、2022年3月末時点の保有資産価値は156億ポンド、純利益は3億1270ポンドだった。

  1. AP=共同、西日本新聞、2022年9月20日付朝刊 
  2. AP=共同、2022年9月20日 
  3. ロンドン、共同、西日本新聞2022年9月20日付朝刊 
  4. 西日本新聞2022年9月20日付朝刊 
  5. WEB女性自身「英チャールズ新国王 エリザベス女王の巨額遺産を相続…相続税の支払い義務は?」2022年9月13日、https://jisin.jp/international/international-news/2134669/
  6. ロンドン=共同、西日本新聞9月20日
Translate »
PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました