ジャニーズ事務所 喜多川氏の性加害を認定 「メディアの沈黙」 政治の責任 安倍政権もジャニーズを政治利用

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Christopher RossによるPixabayからの画像

 ジャニーズ事務所創業者であり、前社長のジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題について、外部専門家による「再発防止特別チーム」は29日、喜多川氏が多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたり性加害を繰り返していたという事実を認定したと発表。

 特別チームは、喜多川氏が事務所内では1970年代前半から2010年代半ばまで、ジャニーズJr.の少年たちへの性加害を繰り返したとし、少なくとも数百人の被害者がいるとの複数の証言を得たとする。

 信憑性については、チームのメンバーで精神科医の飛鳥井望氏が、

「その時の状況をある程度詳しく聞き、真実性があると判断した」

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と説明する。

 ジャニーズJr.は、CDデビューを目指す未成年が多くを占める。調査報告書では、性加害の根本原因が、喜多川氏の性嗜好異常にあり、

「一方的な強者・弱者の権力勾配のある関係性」

の下で未成年に行ったとする。また、喜多川氏の姉で事務所名誉会長だった藤島メリー泰子氏(2021年死去)が喜多川氏による性加害を知りながら、

「徹底的な隠蔽を図ってきた」

と組織の在り方にも言及し、事務所も、

「見て見ぬふり」

 をしてきた指摘する。

 取締役、代表取締役を務めたメリー氏は2021年に死去しているため、ジャニー氏の性加害を認識していたかを直接確認することはできない。

  しかし、調査報告書によると、メリー氏はジャニー氏の性加害問題を認識していたと推認するのが合理的かつ自然であるとしている。メリー氏と戦前から懇意にしていた新芸能学院の名和太郎氏の夫人は生前、

「ジャニー氏は、小さい頃にジャニー氏がやってきたようなことと同じような性加害を受けて育ったから、一種の病気なんだ」

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と話していたという。

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問題の背景

ジャニーズ事務所 創業者の家系図

喜多川諦道氏(故人)

→長女
メリー藤島氏(故人)-作家藤島泰輔氏(故人)
→藤島ジュリー景子社長(娘)

長男
喜多川真一氏(故人)NASA勤務

次男
ジャニー喜多川氏(故人)

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ジャニーズ性加害の主な経緯

1965~67年
「初代ジャニーズ」メンバーも所属した芸能学校での、ジャニー喜多川氏による少年へのわいせつ行為を、一部週刊誌が報道

1988年
フォーリーブスのメンバーだった北公次さんが、著書で喜多川氏の性行為強要に言及

1999年
週刊文春が喜多川氏によるジャニーズ事務所所属の少年へのわいせつ行為などを報じる

2003年
週刊文春の記事をめぐり、事務所などが起こした訴l訟で、東京高裁がセクハラ行為の真実性を認める。翌年確定

2019年
喜多川氏が死去

2023年
3月
英BBCが喜多川氏の性加害を報道。以降、元所属タレントらの告発が相次ぐ

5月
事務所の藤島ジュリー景子社長が動画と文書で謝罪

8月4日
国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会はが、日本政府に被害者救済を要請

8月29日
事務所が設置した再発防止特別チームが調査結果と提言を発表

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「再発防止特別チーム」調査報告書の骨子


・ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長は多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたって性加害を繰り返した

・姉の藤島メリー泰子氏が性加害を知りながら徹底的な隠蔽を図り、事務所も見て見ぬふりをして被害拡大を招いた

・性加害問題をマスメディアが取り上げてこなかったことで事務所は隠蔽体質を強め、被害が拡大した

・同族経営の弊害を防ぐため、藤島ジュリー景子氏は辞任すべきだ

・事務所は性加害を事実と認め、被害者への真摯な謝罪と救済に乗り出すとともに、適正な補償をするために「被害者救済制度」を構築すべきだ

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メディアの沈黙

 再発防止特別チームは、「マスメディアの沈黙」という言葉を使い、マスメディアが性加害を知りながら、メディアが正面から報道しなかったと指弾する。

 会見の翌日、ジャニーズのタレントを長年取材してきた日刊スポーツの記者がコラムを書いている。

<報告書では「メディアの沈黙」も指摘された。世間でイメージされるような「圧力」を認識したことはないが、記事の性質上、日々の取材ではタレントの生の声、素顔を読者に伝えることに終始して、「密室」での出来事に思いが至らなかったというのが正直なところだ。「気付き」がなく、幾度かのタイミングを失した点で、改めて襟を正す必要を感じている。>

 「圧力はなかった」とする日刊スポーツ。しかし同紙は、2年前にメリー氏が死去した際、メリー氏が日刊スポーツに乗り込んできたことを伝えている。

 それは「日刊スポーツ・ドラマグランプリ」が初めて開催された翌年の1998年のこと。第1回は記者と評論家の「審査員票」と「読者投票」で各賞を決め、票の比重は半々だった。メリー氏はこの審査方法に抗議したという。

元ジャニーズ担当記者がこう綴っている。

<応対した私に「あなた、全部のドラマ見ているの?」と聞いてきた。私は「見られる限りは、録画してでも…」としどろもどろに答えた。「見られないのに(記者や評論家が)審査するのはおかしいですね」とズバッと指摘された。そして「やはり視聴者に任せるべきです」。言外に「そうしないとジャニーズのタレントは出さない」のニュアンスを感じたが、メリーさんは純粋にドラマグランプリのことを考えてくれていたと思う。第2回から読者投票だけに切り替え、今年の第25回の節目につながっている。>(日刊スポーツ・2021年8月18日付)

 そもそも、文藝春秋に対する訴訟の東京地裁判決でも、週刊文春の記事において、

 「原告事務所〔注:ジャニーズ事務所を指す〕は怖く、当局〔注:在京の民放テレビ局を指す。〕でも事務所にネガティブなことを扱うのはタブーである」「マスコミ対応を委ねられているメリー喜多川は、ドラマの共演者が気に入らないと、その放送局の社長に直接電話をかけ、外すよう要求することもあった」

とあった。

政治の責任 安倍政権もジャニーズを政治利用


「政治の責任」も問わなければならない。

「ジャニーさんへのエンターテインメントへの熱い思い、託したバトンは、必ずやジュリー(藤島景子)さん、滝沢(秀明)さんをはじめ、次の時代を担うジャニーズのみなさまへと、しっかりと受け継がれていくと私は確信しております」

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 これは、2019年9月に東京ドームで行われた喜多川のお別れ会で代読された、安倍晋三首相(当時)の弔辞の一節だ。安倍氏もまた、ジャニーズ事務所を徹底的に政治利用してきた。

 2018年末には、福島復興を支援してきたTOKIOのメンバーと首相官邸内で懇談し、2019年5月には行きつけのピザ店で会食している。

  翌月のG20大阪サミットの開幕前日には、首脳会談の合間をぬって、関ジャニ∞の村上信五のインタビューを受け、2020年の元日にはラジオの新春番組でV6の岡田准一と対談7

  2019年11月には、嵐の東京ドームのコンサートに足を運び、ステージ裏でメンバーと面会している。この数日前には、嵐が天皇即位を祝う「国民祭典」で奉祝曲を披露していた。

 そもそも安倍長期政権の時代は、ジャニーズタレントの「報道進出」の時期と重なる。日本テレビでキャスターを務める桜井翔をはじめ、同じく日テレ系「news every.」のキャスターに小山慶一郎が。

 TBSのMCには国分太一が抜擢された。

 現在でも「サンデーLIVE!!」(テレビ朝日)に東山紀之が、「シューイチ」(日テレ系)に中丸雄一が出演と、所属タレントが政治を扱う報道・情報番組に出演中だ。

  要は、安倍氏のジャニーズ接近は、民放の政権批判を封じ込めようとする狙いもあったかもしれないのだ。

 一方、SNSでは性被害当事者らへの誹謗中傷がエスカレートしている。これらは、尊厳を踏みにじる二次被害であり、専門家は、

「加害に当たる投稿を正当な批判と思い込んでいることが多い」

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と指摘する。

  1. 西日本新聞「ジャニーズ性加害 認定」2023年8月30日付朝刊、1項 
  2. JCASTニュース「ジャニー喜多川氏は「同じような性加害を受けて育った」「一種の病気」 調査報告書が指摘したメリー氏の認識」Yahoo!ニュース、2023年8月30日、https://news.yahoo.co.jp/articles/ad41ac51b290a41ff2cf030e7e446ace08fb10ab 
  3. スポニチアネックス「ジャニーズ事務所創業家の家系図」2023年8月30日、https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2023/08/30/gazo/20230830s00041000051000p.html 
  4. 西日本新聞「権力一手に性加害40年」2023年8月30日付朝刊、25項 
  5. 西日本新聞、2023年8月30日、1項 
  6. 日刊ゲンダイ「安倍元首相もジャニーズ性加害を“見て見ぬふり”…「蜜月」をとことん政治利用した罪」2023年9月2日、https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/328461 
  7. 日刊ゲンダイ、2023年9月2日
  8. 西日本新聞、2023年8月30日、25項 
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