ロシア・プーチン大統領、5期目へ 「スターリン超え」 今後の行方は?

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Dark NatureによるPixabayからの画像

 ロシア大統領選(任期6年)が3月17日、投票が終了し即日開票され、現職であるウラジミール・プーチン大統領(71)が約87%の得票率で圧勝し、通算5選を決める。

  中央選管の18日の発表によると、投票率は約77%。今回、投票が一部電子化され、投票期間も3日間に延長。結果的に、プーチン政権が目標とした投票率7割、得票率8割を上回る。

  選挙は、ロシアに侵攻され占領下であるウクライナ東・南部4州でも強行され、プーチン氏の得票率は90%前後と発表される1

  5選を果たした結果、プーチン大統領がこの先も任期を全うすれば、ヨセフ・スターリン氏をしのいで、200年以上の歴史の中でロシアで最も長い期間首脳を務めた人物となる。

  今回の大統領選はプーチン氏に加え、政党「新しい人々」のダワンコフ下院副議長(40)、ロシア共産党のハリトノフ下院議員(75)、自由民主党のスルツキー党首(56)の計4人が立候補。

  しかしウクライナ侵攻に明確に反対するボリス・ナデジディン元下院議員らの立候補は認められず、同氏の最高裁への提訴は棄却された2

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スターリン超え

 プーチン大統領が選挙に勝利したことで、政治生命は、首相を務めた期間も含めて30年以上にわたることに。

 新しい任期は2030年まで続き、6年間。これにより、統治期間は旧ソビエト連邦時代のスターリン(29年間)を超える長さになる。

  プーチン氏は1952年10月に、ソビエト連邦時代のロシア北西部のレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)で生まれた。若い頃は地元のクラブで柔道に熱中。

  国立レニングラード大学を卒業した後、憧れたというソビエト連邦の情報機関である国家保安委員会(KGB)に入り、東ドイツでの勤務経験もある。

  1991年のソビエト連邦の崩壊後、彼は故郷のサンクトペテルブルクで副市長を務めた後、国政に進出。

 その後、当時のエリツィン大統領に見いだされ、1998年にはKGBの後継機関である連邦保安庁(FSB)の長官に、1999年には首相に昇進し、エリツィンからの後継者として指名され、2000年には大統領選挙で勝利。

  ソビエト連邦崩壊後に経済が低迷していた中、プーチンの政権下で、原油や天然ガスの世界価格の高騰に恵まれ、2000年の経済成長率は10%に達した3

不正投票

 今回の大統領選については、いくつか不審な出来事が報告されている。

  ロシアの独立系メディア「ソタ」は、3月19日にSNSに動画を投稿。この動画には、ロシア北西部レニングラード州のある投票所で、集計作業をしている責任者が、ある候補者に投じられた票をプーチン大統領の票の山に加えている様子が映されていた。

  南部クラスノダール地方とロシア西部サラトフ州の投票所では、束になった投票用紙が投票箱に入れられているのが発見。

 サンクトペテルブルクでは、女性が投票箱を傾ける様子を撮影した映像があることから、票をばらばらにしようとしていた可能性も4

  ロシアの選挙監視団体「ゴロス」は、専門家の分析に基づいて、プーチン大統領が獲得したとされる7628万票のうち、約2200万票が不正に追加されたとの見解を示す5

  選挙では、モスクワを含むリベラル派が多い都市部や、前回投票率が低かった地域を中心に電子投票が導入。しかし、独立系選挙監視団体からは、票の操作を容易にする可能性があると批判された6

今後の行方は?

 
 5選を果たしたプーチン大統領であるが、ロシアを率いるのか。

  プーチン大統領は5選を果たす前、2月29日に行った年次教書演説で次のように語る。

 「ロシアは23年に世界平均を上回る成長を遂げた。購買力平価ベースの国内総生産(GDP)でロシアは欧州最大であり世界5位だ。今の成長のテンポと質からすると、近い将来にロシアがもう一歩前進し、世界の四大経済国入りすることも可能だ」

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  現在、購買力平価ベースのGDPの世界4位は日本だ。ロシアが世界4位になるということは日本を抜くことを意味する。世界銀行データによると、22年時点で日本が5.7兆ドル、ロシアが5.3兆ドルと僅差だ。

  プーチン大統領は、23年にロシアが3.6%成長したのに対し、日本はわずかな成長率にとどまっており、このペースが続けばロシアが近い将来日本を抜く可能性は十分あると力説する8

  一方で長引くウクライナ侵攻が、ロシアの出生率の低下や貧困の解消、人手不足などの課題を一段と深刻化させている。今後、大統領選を終えたプーチン大統領が、財源確保のため増税に踏み切るかどうかが、まずは注目だ。

  1. 時事ドットコムニュース「プーチン氏が圧勝 5期目30年まで、スターリン超えへ―ウクライナの占領地でも強行・ロシア大統領選」2024年3月18日、https://www.jiji.com/jc/article?k=2024031800085&g=int 
  2. 日本経済新聞「ロシア大統領選、プーチン氏が勝利宣言 任期30年まで」2024年3月18日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR172W70X10C24A3000000 
  3. 山衛守剛「スターリン超え長期政権の可能性 プーチン露大統領の歩みと思想」毎日新聞、2024年3月17日、https://mainichi.jp/articles/20240316/k00/00m/030/231000c 
  4. 朝日新聞デジタル「他候補の票をプーチン氏に 大統領選に不正疑惑、選管は「公正」主張」2024年3月22日、https://digital.asahi.com/articles/ASS3Q054LS3PUHBI03P.html 
  5. 朝日新聞デジタル、2024年3月22日 
  6. 日テレNEWS「ロシア大統領選で「電子投票」新たに導入も…“不正の温床に”危惧する声」2024年3月16日、https://news.yahoo.co.jp/articles/2808e11814853ce6a27fcc276cbac3f4096f200d 
  7. 服部倫卓「大統領選後のロシア 「大砲もバターも」路線、綱渡り」日本経済新聞、2024年3月29日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD220Z50S4A320C2000000/ 
  8. 服部倫卓、2024年3月29日 
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