コロナ渦は看護学生にも影響 予定通りに実習ができず 学校の97%「病院実習拒否」経験、3%は現場実習できない

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 コロナ渦で現場の最前線に立つ職種のひとつである、看護師。新型コロナウイルスは、看護師を目指す学生にも大きな影響を与えた。病院などで行われる「職場実習」(看護実習)の中止が相次いでいたのだ。コロナ渦により、医療の現場を学ぶ貴重な機会が失われている。

 滅菌された医療用のガウンを身にまとう人。ベッド脇では血圧を測る人の姿も見られる

 学生、「きつくないですか?腕」

 室内には医療用の器材が多く並んでいるが、ここは病院ではない。

テレビ西日本『看護学生たちの「現場実習」中止相次ぐ コロナ禍で病院側の受け入れ難しく…サポート整備が急務【福岡発】』、FNNプライムオンライン

 福岡県福岡市にある看護専門学校では、病院での現場実習のかわりに、学校内部で実習が行われていた。

 学生、「おしりの方も洗います。流します」

 「陰部洗浄」の実習。病院での実習であれば実際に入院患者に触れるが、学校では人形を使っての実習となる。

テレビ西日本『看護学生たちの「現場実習」中止相次ぐ コロナ禍で病院側の受け入れ難しく…サポート整備が急務【福岡発】』、FNNプライムオンライン

 看護師の国家試験を受けるためには、看護学校などで専門の過程を終えることが条件。そして3年制の場合、あわせて10カ月間におよぶ現場実習を終えなければ卒業することができない。しかし、コロナ禍の影響により、実習生の受け入れを中止する病院が相次いだ。

 福岡県では、2021年4月に初めて緊急事態宣言が発令、以降、県内の38の看護学校の中で医療機関での実習をすべて予定通りに実施できた学校はひとつもなかった。

 厚生労働省は2020年、新型コロナウイルスの拡大を受け、医療機関での実習とほぼ同じ内容の授業を学内で受ければ、課程の修了を認める方針を打ち出す。

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看護実習とは


 看護実習では、具体的にどのようなことを行うのだろうか。 看護とは、「実践の科学」であるという(聖路加国際大学看護学部)。講義と演習で得た学びを、実際の医療の現場でどう活かすか。そのために医療現場で実習を行い、臨床に強い看護職を育成するという。

 ここでは、聖路加国際大学看護学部を例に実習の具体例を見ていく。

1年次前期 コミュニケーション実習

 人間と人間そして患者と看護師の関係の重要性を理解し、関係を築き・深めるためのコミュニケーションに関する概念、モデル、方法及び態度を学ぶ実習

1年次後期・2年次前期 サービスラーニング

 実践現場に継続的に入り、看護現場で求められるサービスの内容、提供方法を学ぶ

3年次後期 看護学実習

 成人、老年、小児、精神、地域・在宅などの分野にわたり、健康レベルと対象(患者)の特性に応じた実習を、それぞれ2週間ずつ経験

4年次前期 総合実習

 小児、家族発達、ターミナル、精神、地域、国際などから関心のあるテーマを選んで取り組む2週間の実習

4年次前期 看護ゼミナール

 文献学習や見学、討論、グループワークなどを行いながら、特定分野の看護についての理解を深める。

聖路加国際大学看護学部『看護実習について』

 次に、聖路加国際大学看護学部のホームページに掲載されてある、実習の1日の流れ(例)を見ていく。

6:00 起床。支度をして大学へ出発。
7:00 大学で実習服に着替え、病棟へ。
7:30 受け持ち患者さんの情報を病棟PCで確認。
8:00 申し送り。指導者に行動計画をチェックしてもらい、担当ナースに報告。 また病室で環境整備やバイタル測定も行う。
10:00 投薬、ベッドメイキング、清潔ケア
11:30 ナースに午前の申し送りと患者さんの食事介助を行う。
12:30 大学に戻り、ラウンジで昼食。
14:00 患者さんのリハビリ同行、ナースへ報告。
15:30 実習終了
16:30 大学に戻り、図書館で記録作成。
18:30 仲間と大学周辺で夕飯。
20:00 帰宅。記録作成。
23:00 記録作成終了、入浴して就寝。

聖路加国際大学看護学部『看護実習について』

看護学校の97%「病院実習拒否」経験、3%は現場実習できず


 新型コロナウイルスの蔓延は、看護実習に具体的にどのような影響を与えているのだろうか。

 一般社団法人日本看護学校協議会共済会が、2021年2月16日に調査結果を発表。看護学校や看護大学などの「看護職養成校」のに影響を尋ねたころ、96.6%が実習先から「受け入れ不可」の連絡を受けた経験があるという。

 調査では、不可の理由を聞いてはいないが、病院側が感染予防策として立ち入り人数を減らす必要があり、学生用の感染防護具も確保できなかったなどの事情もあったためだとみられる。

 結果的には、学生1人あたりの実習の時間を短くするなどの対応し、受け入れ不可の連絡がなかった養成校を含め95.2%が実習を実施できたが、しかし3%の養成校は現場実習をできていなかった。

 ただ、受け入れ不可の連絡のあった養成校を含め、全体の88.2%が学内での実習を導入していた。それでも、代替や補完するためにさまざまな工夫をしている。

 91.2%の養成校が市販の視聴覚教材を使ったり、シミュレーター(人形)は70.4%が導入。あるいは、実習先のスタッフをオンラインでライブ招請した養成校も13.9%あり、コロナ渦で看護教育のICT化も進んでいた。ただ、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などを活用した養成校は3.6%にとどまる。

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看護学生の思い 実習の満足度、3分の2は否定的


 一方、このような異例ともいえる看護実習を経験した学生の思いはどうだったか。

 学生が、「実習場に滞在した時間」が例年通り確保できたのは9.5%、「患者らと接した時間」の確保をすることができたのは11.4%、「看護技術を実施した回数」の確保は90校(12.9%)と、多くの養成校で実習の時間が明確に減少していた。

 さらに、実習場滞在の時間や看護技術経験回数が例年の半分以下に激減した養成校は、全体の30%以上にまで達した。

 その結果、「実習での学生の学修(理解、知識・技術などの習得)成果」が例年と比べて、「とても少ない」と回答した養成校が24.3%、「やや少ない」(33.3%)と、減少を指摘する回答が57.6%と過半数に達した。

 また、学生の実習での満足度が上がったかどうかについても、否定的な回答が65.7%と3分の2近くを占めた。

 調査では、実習の場における”リアル”な体験や経験、見学の機会を十分に得ることができなかった看護学生が実際に看護師になったとき、うまく自助努力では乗り切れるかどうか限界があり、何か助成や配慮が必要であると指摘する。

卒業してからのサポートも


 しかし、コロナ禍になって2年が経過。予定通りに実習ができなかった新人の看護師が実際に医療機関に就職している。

 新人の看護師が医療機関に就職するにあたり、実習不足の影響があったか、看護師専用コミュニティサイト『看護roo!(カンゴルー)』運営会社が調査、その結果、新人の看護師とその看護師を受け持つ先輩にあたる看護師両者ともに4割が、「実際に実習不足の影響を感じる」は新人・先輩看護師ともに4割に上った。

 とくに新人を受け持つ側にとっては、実習不足の影響を感じている人の方が上回るという結果になる。

 臨床現場で実習不足の影響を感じることとしては、新人の看護師は「看護技術」「看護記録などケア以外の業務」「患者とのコミュニケーション」の経験不足を挙げる声が多く、先輩の看護師は、「患者とのコミュニケーション」「看護技術」「自信のなさや強い緊張」などを指摘する声が目立つ。

 実習の機会が失われた2021年度の新人看護師については、日本看護系大学協議会等も各大学を通じて医療機関などに「受け入れに当たっての配慮」を依頼するなど、養成機関と臨床の現場が一体となってサポートするよう努力がなされている。

 一方で、看護の現場においても慢性的な人手不足が続く。看護の現場においては、例年以上の新人教育と新型コロナ対応を含む業務との両立は負担にもなる。看護の現場が安心して人材育成に取り組めるような環境も求められるだろう。

参考文献

OVO『看護学校の97%「病院実習拒否」経験 学修成果は減少、ワクチン求める声も』、2021年2月16日、https://ovo.kyodo.co.jp/news/life/a-1573517

テレビ西日本『看護学生たちの「現場実習」中止相次ぐ コロナ禍で病院側の受け入れ難しく…サポート整備が急務【福岡発】』、FNNプライムオンライン、2022年3月19日、https://www.fnn.jp/articles/-/332402

聖路加国際大学看護学部『看護実習について』、http://university.luke.ac.jp/college_of_nursing/practical.html

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