新型コロナウイルスワクチンは4回目接種へ 対象者は? 効果は?

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Alexandra_KochによるPixabayからの画像

 新型コロナウイルスワクチンの4回目接種に関する動きがわかってきた。

 4回目接種について、厚生労働省は3回目からの接種間隔を5ヶ月として実施する方針で検討。また、対象者は当面の間は、重症化リスクが高い高齢者などに絞るという。

 当初、厚労省はすべての希望者を対象に、4回目の接種を行う想定で準備していた。しかし、3月に開かれた専門家による分科会において慎重な意見が相次いだため、

 4回目を実際に行うかどうかや、対象者、3回目からの接種間隔などについては、引き続き審議する

としていた。

 結果的に、厚労省は、接種の対象者を、重症化リスクの高い高齢者や、基礎疾患のある人に限ったうえで4回目接種を実施する方針に切り替え、3回目からの間隔から5ヶ月あけて接種する方向で検討するという。

 接種間隔についても、厚労省は当初、「6ヶ月を基本とする」としていた。しかし、4回目接種を先行して実施しているイスラエルのデータを分析した結果、3回目接種から6ヶ月後には、ワクチンの効果が大幅に低下する可能性があると判断、前倒しすることに。

 4回目接種の間隔については、4ヶ月間隔で実施している国もあるが、安全性の観点から、少なくとも5ヶ月間あける必要があると見ている。

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経緯


 当初、厚労省は4回目のワクチン接種について、すべての希望者を対象に接種を行う想定で準備を進めていた。ところが、結果的に高齢者や基礎疾患がある人を対象に接種対象者を限定することとなった。

 対象を限定する理由としては、若年層では4回目の接種をしても効果が低いことや、海外でも高齢者を中心として4回目接種を実施しているため。ただ、専門家の中には医療従事者らを接種対象に含めるべきという声もあり、今後、さらに検討がなされるという。

 厚生労働省は5月下旬をめどに会場の手配や接種券を送付する準備などを終えるよう、3月、自治体に通知。

 これを受け、各自治体でも準備が進められている。東京都江東区では、最短で5月1日から医療従事者と高齢者施設の入所者を対象に、翌月の6月18日から一般の高齢者に4回目の接種を始めることができるよう、接種券の手配を進めている。

 4月26日には、昨年のうちに3回目の接種を終えた医療従事者と高齢者の接種券、合わせて3500人分が、印刷会社から江東区役所に届く予定。

 国からは、希望者全員が対象になることを想定して準備を進めるよう求められているというが、今後、対象者が変更される可能性もあるため、国からの最終的な連絡を待って接種券を発送するという。

 また、今後、対象が変更された場合に備え、さまざまなパターンを想定して接種計画を策定しているとのこと。

 基礎疾患のある人に今後、接種を推奨することになった場合は、ただ自治体で個別に把握できないため、ポスターなどで一律に呼びかけることを検討している。

接種対象者


 厚労省は25日の分科会で、4回目接種の実施を正式に決めた。接種間隔は、3回目から5ヶ月以上とする。

 接種者は、当面は60歳以上と基礎疾患のある人が対象になる見込み。より具体的には、対象者は、「高齢者等」とした。

 2回目の接種から3回目までの間隔は6ヶ月以上となっていたが、重症化の予防効果が6ヶ月程度で落ちることなどから、4回目の接種間隔はさらに短くする。

 ワクチンは、米国のファイザーとモデルナを想定。

 さらに分科会では、2回目と3回目の接種間隔も、現行の6ヶ月から5ヶ月に短縮する。4回目接種が進むイスラエルでは60歳以上を対象に、3回目接種の4ヶ月後から実施している。

 国は、都道府県などに5月下旬にも4回目接種をできる体制の準備を求めている。これまでは、1回目、2回目は5歳以上、3回目接種は12歳以上と幅広く設定した。

 しかし4回目の接種については、具体的な対象年齢は27日に開かれる分科会で議論する。具体的には今後、高齢者の接種を努力義務とするなど、接種対象者を絞る見込み。

 新型コロナウイルスワクチンの3回目接種は、昨年2021年の12月に始まった。今月25日の公表時点、接種者は、65歳以上は86.9%となる一方、20代は30.1%、30代は33.2%にとどまっている。

 また、2回目を接種したタイミングによっては、今後、5〜6月に3回目接種の時期を迎える人も多く重なり、大規模な接種会場によっては3回目と4回目接種の準備を同時に進める必要性に迫られる可能性も。

海外の動き


 海外の動きはどうなっているのか。

 厚労省によると、欧米では3回目の接種のあと感染を防ぐ効果が次第に低下することが報告されたイギリスやフランス、ドイツ、イスラエルでは高齢者や医療従事者、重症化リスクのある人などを対象に4回目の接種が行われている。

 イギリスでは3月21日から、4回目となるワクチンの追加接種が、重症化リスクの高い75歳以上の高齢者などを対象に始まった。さらに今年の秋には、50歳以上などさらに追加接種の対象の拡大をすることを検討しているという。

 米国では、政府の首席医療顧問を務めるファウチ博士が2月16日、ファイザーやモデルナのワクチンについて追加の摂取から時間が経過するとワクチンの効果が徐々に低下していく可能性があるとして、4回目の接種が必要かどうか慎重に検討していく考えを示す。

 CDC(米国疾病対策センター)が発表した追加接種の効果についての分析では、3回目の接種を終えた人での入院を防ぐ効果は、オミクロン株が主流となった時期で、摂取から2ヶ月以内の場合には91%であったが、4ヶ月以上たつと78%に低下していた。

 ファウチ博士は、この分析について、

 低下したとはいえ、入院を防ぐ効果は比較的高いといえる。今後も新型コロナウイルスの感染者や入院者を減少させ続けるためにはワクチンの追加の接種が極めて重要だ。

 4回目の接種については随時、データを監視し、推奨が必要かどうか判断していく。

NHK 首都圏ナビ、2022年3月24日

と述べた。

専門家の見解


 専門家の意見もさまざまだ。3月24日に開かれた分科会においては、4回目接種の実施に向けて準備を開始することには合意。ただ、有効性を示すデータは乏しく専門家の多くが慎重な姿勢を見せた。

 専門家からは、

 「対象者は高齢者や医療従事者に特化すべきだ」

 「準備しつつ、状況次第で止める勇気を持つべきだ」

 「3回目接種の効果やコストを先に検証した方がいい」

などの意見が出た。

一方、厚労省の専門会合の脇田隆字座長は3月23日、

 3回目の接種の効果が一定の期間がたつと低減することは、すでに報告されている。

 基礎疾患がある人や高齢者など重症化リスクのある人への4回目接種は、おそらく必要になるのではないかと想定している。

 3回目よりは接種間隔が短くなる可能性もあるので、間に合うように準備も促す必要もある

と語った。

 感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、4回目の接種の準備を今から始めておかなければ、ワクチンや接種する場所の確保の問題が起きる可能性があると指摘、

 3回目の接種も、本来ならもっと早く始まるはずだった。3回目の接種がなかなか進まなかった経験から、早めの準備が大切だ。

 多くの人にとって4回目接種を意識するのはもう少し先になると思うが、少なくとも行政面では準備だけでも早めに進める必要がある

NHK NEWS WEB 2022年3月29日付

とした。

 イスラエルの研究では、オミクロン株流行時、4回目接種による発症予防効果は、ファイザー製で43%、モデルナ製で31%となっている。

今後の動向


 結局、私たちは今後、ワクチン接種を何度も繰り返す必要があるのだろうか。大阪大学の宮坂昌之教授は、NHKの取材に対し、

 私たちの社会が、ワクチンに感染を防ぐ効果を求めるのか、重症化を防ぐ効果を求めるのかによって対応が異なってくる

と指摘している。

「新型コロナウイルスに対する免疫は持続期間が短く、免疫のレベルはとても高いわけではなさそうだということが分かってきた。インフルエンザワクチンのように、ある程度の感染者は出るけれども、重症者の発生は抑えることができる戦略でいいのではないか。

 ワクチンを接種していても軽い感染は起きてしまうが、重症化しない。うまくいけば1年に1回の接種で済むようになるのではないかと期待している。ただ、それでも、重症化リスクが高い人は、もう少し頻回に追加接種が必要かもしれない。

 副反応を減らしながら効果を得るためには、どの程度の接種量と間隔がいいのか、4回目や5回目の接種を想定し、日本でも臨床試験などで確認するべきだ

NHK NEWS WEB 2022年3月27日

 これら、4回目接種をめぐる議論の一方で、このような意見も聞かれた。東京医科大学の東京医科大学の濱田特任教授は、

 重症化リスクの高い高齢者や、医療従事者などは3回目の接種後、半年ほどたった段階で(4回目接種を)行うのがよいのではないか

NHE NEWS WEB 2022年3月29日

としつつも、

 今優先すべきは、3回目の接種率を少なくとも5割以上まで上げること

だと強調する。

 西ヨーロッパでは規制の緩和によって、感染がやや増加しているが、追加のワクチン接種率が5割を超え、感染者は出ても重症化する人が少ないから規制の緩和が可能になっている。

 日本では3回目の接種率が3割を超えたくらいの段階なので、今後、社会や経済を動かしていくための出口戦略を目指すうえでも、4月から5月くらいまでには、5割以上に持っていくことがまずは大事だ。

 マスクをする、人との距離を取るといった方法をうまく使いながら行事を実施するなど、対策を取りつつ、日常の生活に戻していくことが当面の課題だ

NHE NEWS WEB 2022年3月29日

参考文献

『コロナワクチン4回目接種 効果や安全性踏まえ議論 海外の状況は』NHK 首都圏ナビ、2022年3月24日、https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20220324d.html

『新型コロナワクチン 4回目接種は必要?今後も打ち続けるの?』NHK NEWS WEB、2022年3月29日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220329/k10013556951000.html

『ワクチン4回目、高齢者ら限定 接種対象、持病ある人も』東京新聞デジタル、2022年4月20日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/172756

『ワクチン4回目、高齢者ら限定 接種対象、持病ある人も』東京新聞デジタル、2022年4月20日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/172756

『ワクチン4回目接種 3回目から5か月間隔での実施を検討 厚労省』NHK NEWS WEB、2022年4月22日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220422/k10013593141000.html

『ワクチン4回目接種、専門家から慎重意見相次ぐ 有効性データ乏しく 厚労省分科会、準備開始は合意<新型コロナ>』東京新聞デジタル、2022年3月24日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/167557

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