Igor OvsyannykovによるPixabayからの画像
日本公開の映画のうち邦画作品のなかで、歴代興行収入トップ50位のうち、ほぼすべてを東宝作品が占めている。なぜ、このようなことが起こってしまったのか。
今回は、その背景にある日本映画市場の構造的問題に迫っていく。
前回までの記事
映画版「鬼滅の刃」歴代興行収入1位の影で危惧される日本映画界の未来 〜1〜 「東宝一強体制」の映画界に未来はあるか!?
目次
- 東宝1強体制の理由
- 東宝映画は、果たして本当に世界に通用するものなのか?
東宝1強体制の理由
時代は少し遡るが、2016年のカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門審査賞を受賞している深田晃司監督は、この年の「キネマ旬報」10月下旬において興味深い発言をしている。
例えば2015年の邦画の興行収益のランキングを見ると、1位から5位までがすべて東宝で、その後6位に東映、8位に松竹がかろうじて入るが、それ以外20位まですべて東宝作品である。
この状況は客観的にみても異常ではないか。もちろんそこに東宝の企業努力、作品の力がまったく無関係であるとは言わないが、しかしこの圧倒的なシェアを生み出すのに、東宝が誇る「国内最強の興行網」たるTOHOシネマズを擁する構造的優位は当然無関係ではない。
最新の日本における映画業界の売り上高とそれを占めるシェア(2019年~2020年)の数字を見てみると、1位の東宝の売上高は2,627億円で、そのシェアは32.9%程度であり、ただ単純にこ数字だけを見ると「東宝1強体制」とはあまり見えてこない。