Marja MäkeläによるPixabayからの画像
第20回統一地方選挙は9日、前半戦となる9の道府県知事選と6の政令市長選の投開票を迎えた。
大阪の府知事、市長の「ダブル選」は日本維新の会系の大阪維新の会が再び制す。自民党の支持層が割れた保守分裂選挙となった奈良は維新候補、徳島は無所属で新人の元衆議院議員後藤田正純氏(53)が当選を決めた。
与野党対決となった北海道、大分は自民党候補が勝利。神奈川、福井、鳥取、島根の4つの知事選は与野党相乗りの現職が勝利を収めた。
なお、41の道府県議選、17の政令市議選も投票が行われる。結果、道府県議選では女性の当選者が過去最多となった1。
しかし奈良県知事選の結果は、今後、影響が残りそう。現職と県連推薦の元総務官僚が自民党支持層を奪い合い、結果、維新候補の完勝を招く。
元総務官僚は、県連の会長を務める高市早苗経済安全総務担当相の、総務大臣当時の秘書官だった。5選を狙う現職に対し、「世代交代」を訴えた高市氏が押し切った形に。
自民党内では年内の衆議院解散もささやかれるなか、地方組織に”しこり”を残した。
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韓国 世襲議員、わずか5%程度
日本の選挙を”つまらない”ものにしている要因の一つが世襲議員の多さだ。日本の衆議院では26%(2017年)で、自民党に限ってみれば40%に達するという2。
また、日本では世襲議員の当選率が7~8割と、極めて高いというデータもある。
一方、来年4月に総選挙を控える韓国のでは、国会議員の世襲議員の割合はわずか5%程度。韓国メディアによると、アメリカ上下両院の6%(2015年)よりも少ないという。
その理由を、韓国建国大学の李鉉出教授(政治学)は、西日本新聞の取材に対し、
「韓国社会は機会の平等に極めて敏感。議員との血縁を特権とすることは許さない」
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と指摘した。公正・公平に敏感な背景には、韓国社会の厳しい競争と兵役があるという。
「学歴社会の韓国では子どもの頃から厳しい受験勉強を強いられる。兵役も回避できない国民の義務だ。親などの力によってこうした競争を避け、特別な地位を得ることには強い反発がある」
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とする。
李教授は、
「韓国は植民地支配や軍政から、民主化運動を経て今の政治体制を築いた。既得権益を変えようという意識も強く、世襲もその対象になる」
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と分析する。
求められる主権者教育 フィンランドの場合
主権者教育の在り方も大いに問題がある。日本で主権者教育が”解禁”となったのは2015年。2016年の18歳選挙権実現に向けて通知を出し、1969年から続いていた「政治教育の原則禁止」の方向性から大きく舵を切った。
他方で、いまだ教員に対し、”政治的中立”性を強く求めており、現場の教員は萎縮、一部の私立学校を除き、多くの学校現場では現実的な事象を取り扱うことができないでいる。
諸外国の場合は、政党やさまざまな問題・立場を取り扱うことで”政治的中立”を目指す。これを「積極的政治中立性」という。
たとえばフィンランドでは、教員が一方的に教える方式ではなく、生徒が教科書やパソコンなどを使いリサーチを行い、プレゼンテーションをしながら学んでいくスタイルが一般的だ4。
教科書の内容も違う。以下のようなものがフィンランドの教科書に記載されてある。
右翼、またはブルジョアの政党は、自分自身に対する努力と個人の責任を強調しています。彼らの意見では、たとえば、地方自治体は必ずしもすべての基本的なサービスを自社で作成する必要はありませんが、合理的な場合には民間企業からそれらを購入する必要もあります。
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改革待ったなし 選挙制度の問題も
国の課題を掘り下げれば、行きつくのはイコール地域の課題でもある。1970~80年代は、市町村で行われる選挙の投票や関心度は、国政選挙よりも高かったというデータもあるという6。
ちょうど人口が増加し始め、団地や住宅街の整備、あるいは公害対策を求める強い民意があったようだ。
このまま地方選挙における低投票率・低関心がつづくと、より一層、地方議会の正統性や信頼性が揺らぎかねない。さらに議員定数の削減論に拍車がかかり、選挙区の定数が削減される事態にも。
そうなると、新人の挑戦が余計に難しくなる。議会の多様性がさらに失われ、民意も反映されなくなる。
地方議会における選挙制度の改革も必要だろう。たとえば 日本の都道府県議会は小選挙区と中選挙区の混合、市町村議会は主に自治体ごとに一つの選挙区をつくる大選挙区制。
しかし世界を見渡せば、地方議会レベルにおいても日本における衆議院のような小選挙区比例代表制などを導入している国もある。
さまざまな背策を練り、地方議会の活性化なくしては、国全体の選挙も盛り上がるわけがない。