躍進する日本維新の会の虚像 お友達への権限移譲 大阪産ワクチン 北朝鮮以下の大阪メディア

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Masashi WakuiによるPixabayからの画像 

 10月31日投開票の衆議院選挙では、自民党が公示前よりも議席を減らしながらも、絶対安定多数の261議席を確保した。

 さらに、日本維新の会も大きく議席を増やす。維新は、大阪府内の19選挙区のうち15選挙区で候補者を擁立、全員が当選を果たしただけでなく、兵庫6区でも公認の市村浩一郎氏が僅差であったが勝利し、大阪以外の小選挙区で初めての議席を獲得した。

 比例区では、前回の衆院選の8議席から大きく数字を伸ばす25議席を確保、結果的に公示前の11議席から4倍近い41議席獲得し、第3党にまで躍り出た。

目次

  • 日本維新の会の実態
  • 「既得権益の打破」という名のお友達への「権限移譲」
  • 大阪産ワクチンをめぐる疑惑
  • 維新政治の本質
  • 北朝鮮以下の大阪メディア
  • 日本沈没は、大阪から始まる
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日本維新の会の実態

 しかしながら、大阪といえば行政サービスの切り捨てにより医療崩壊が発生、新型コロナウイルスにおける全国で最多の死者数が出ただけでなく、その“致死率“は欧州レベルとまでいわれた。

 選挙公約では、蓮舫氏を意識してか、「二重国籍の可能性のある者が国会議員となっていた事例に鑑み、外国籍を有する者は被選挙権を有しないことを定めるとともに、国政選挙に立候補する者は自らの国籍の得喪履歴の公表を義務づけます」という公約まで盛り込んだ。

 このことについては、投開票日のTBSラジオの「総選挙スペシャル2021」において、フォトジャーナリストの安田菜津紀氏が、「これ自体が偏見や差別を助長する政策ではないのか?」と馬場幹事長に追及。

 しかし幹事長は、「公人ですからきちっとした経歴を明らかにするのは当たり前」「“人歴‘をオープンにするの当たり前」と答えた。

 さらに荻上チキ氏から「たとえば被差別部落出身であることを書け、とは言わないと思うんですけど、国籍についてはどうして求めることが妥当なんでしょうか?」という質問については、「同和地域の出身の方は日本人ですからそういうことを公表する必要はまったくないと思いますけど、どこの国籍を持っていたかということは(中略)オープンにしていだだく必要がある」とし、さらに荻上氏が、「帰化された方などに関しては同じ日本人というカテゴリーとはまた別という理解ですか?」と質問を求めると、「そうですね」とまで答えた。

「既得権益の打破」という名のお友達への「権限移譲」

 そもそも日本維新の会が訴える「身を切る改革」や「既得権益の打破」の実態は、所詮、「お友達への既得権益への移譲」にすぎない。

 たとえば、今月15日、日本経済新聞電子版が、「大阪の国際金融窓口、パソナが運営へ」との記事を配信した。

 この「国際金融都市構想」は、菅政権が実現を目指し、東京や神戸、大阪が名乗りを上げて金融機関の誘致や都市の再開発などに取り組む者である。

 だが、大阪府は15日に、「金融や生活面での相談にワンストップで応じる窓口の運営事業者」をパソナに決定したのだ。

 周知の通り、パソナグループは竹中平蔵氏が取締役会長を務めている。平成の“政商“とも言ってよい竹中氏は、安倍・菅政権のブレーンとして政権の中枢に食い込み、自身が関係する企業に利益相反・利益誘導ともいってよい行為を繰り返してきた。

 昨年には、「持続化給付金」の事業をはじめ、パソナは省庁による公共事業を請け負ってきた。大阪府は、1月に時短協力金の支給業務をこのパソナと随意契約した。

 しかしながら、この大阪では時短協力金の支給の大幅な遅れが発生した。6月に朝日新聞が調査したところ、緊急事態宣言の対象となった11都府県のうち、福岡県(99%)や愛知県、京都府、兵庫県などが90%以上であったのにも関わらず、大阪府の支給率は64%であった。

 しかも、この支給の遅れの原因は明らかにパソナにあった。しんぶん赤旗によれば、大阪商工団体連合会(大商連)が6月に大阪府と交渉を行った際、府側が「審査現場を担当する府の職員が2月当初は、2、3人しかいなかった」とし、さらに府は、「(パソナに委託しているため、パソナ側に)直接指導することは偽装請負になるためできない」「私たちは委託業者からの相談を受けて判断するという配慮をする」と語ったという。

 また、支給業務に関わっていたパソナの元契約社員が、府に対して意見書を提出、当時の状況について、「2月に書類不備とされた協力金の申請書が、4月になっても放置されていた。3月分の不備書類は手が付けられていない状態だった」「連絡が来ないという業者さんの声もあるが、放置していたから連絡が無かったといえる」とし、書類放置の背景については、「パソナ側が協力金支給のノウハウを持っていなかったことが大きな理由」とし、さらに「ノウハウが無いのに、どのように精算(委託にかかる費用に算出)をしたのか」とパソナへの委託費用の精算根拠の自体についても疑問が投げかけられた。

 さらに、昨年11月には、大阪市内の保健福祉センターが生活保護申請者に対し就労指導として渡した履歴書の見本に「パソナ太郎」「大阪市立パソナ中書かれていたことが話題となり、パソナが大阪の行政サービスに深く食い込んでいることが浮き彫りになった。

 問題が深刻なのは、パソナへの委託が生活保護の受給抑制する仕組みにもなっていたという。

 このような、大阪府とパソナの関係は、橋本徹氏と竹中氏との関係にまで遡る。竹中氏は、橋本氏を“小泉純一郎“に重ね合わせて称賛し、それを受け、橋本氏が2012年に国政政党として旧日本維新の会を立ち上げ、次期衆院選に擁立する候補者を選定する委員会の委員長にこの竹中氏を抜擢したのだ。

大阪産ワクチンをめぐる疑惑

 「大阪産ワクチン」にも疑念が投げかけられている。この大阪産ワクチンは、吉村知事や松井大阪市長が昨年4月に発表したものだが、しかし最近、最終段階の治験を断念せざるを得なかった。

 ワクチンは、大坂大学の森下竜一・寄附講座教授と、この森下教授自ら創業したバイオベンチャーの「アンジェス」とが共同で開発を進めてきたDNAワクチンだ。

 昨年4月14日に吉村知事と松井市長が会見を開き、「オール大阪でワクチン開発を進める」と宣言、知事は「(昨年)9月から実用化に向かう」「実用化されれば、10万~20万人単位で接種が可能で、コロナウイルスと戦う武器になる」と断言した。

 それを受け、開発会社のアンジェスの株価は、それ以前の600~700円台前後から2000円以上にまで上がった。

 しかし、実際には実用化どころか最終治験のめども立たず、今月5日になって、「昨年6月から今春にかけて実施していた治験では十分な効果が得られなかった」(読売新聞6日付)とし、「参加した計560人のデータを分析した結果、米ファイザー製などに比べて効果が低く、最終段階の治験を断念した」という。

 大阪産ワクチンをめぐっては、昨年6月、知事が「30日から治験を開始」を発表したが、これは治験を主導する大阪市立大学が治験の計画を承認する審査よりも1週間も早い発表であったため、本来は厳正であるべき医薬品審査の手続きの過程をめぐる不透明さの問題もあった。

 また、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授は、時事通信の取材に対し、欧米や中国では、人への治験開始前に動物実験の詳細なデータが公開されているのに、「アンジェスは開示されていない」と指摘し、「承認後に死者が出たケースも過去にはある。スケジュールありきで進んではならない」と応じた(時事ドッドコム:2020年6月30日付)。

 そもそも、このアンジェスの創業者である森下竜一氏自身が、竹下平蔵同様の”政商”ともいってよい人物であった。

 有名なのは、安倍元首相との関係であり、第二次安倍政権時には、「内閣規制改革会議」の委員に選ばれたほか、安倍首相が本部長を務める「内閣官房健康・医療戦略本部」でも戦略参与となっている。

 森下教授は維新とも深い関係にあった。2013年に教授は、「大阪府・市統合本部医療戦略会議」の特別参与となり、2016年には「日本万博基本構想」委員に就任していた。

 しかも、森下教授と維新とを深く結びつけたのは、今年、日本大学の医学部付属病院の建て替え工事をめぐって背任容疑で逮捕された、医療法人グループ「錦秀会」の元理事長・籔本雅巳容疑者だとされるため、穏やかではない話だ。

維新政治の本質

 維新の政治の本質とは、大阪に広がる「貧困」と「格差」を”分断”へと転化させ、さらにいえば、中間層に位置するサラリーマン層をも、弱者への憎悪の感情を組織化し、それを分断を固定化させるものでもある。

 大阪に住む「勝ち組」は、都心のタワーマンションや郊外の戸建て住宅に暮らし、税金の負担、社会保険料、介護保険料、年金などを負担しながらも、もともと、医療や子育て、福祉などの公的サービスを受ける機会はそれほど多くない。

 さらに大阪市内を見渡せば、高層タワーマンションの真下に、明らかな貧困世帯が住む長屋の木造家屋が残されているという、”格差”が目に見えて存在する地域が、数多く存在する。

 そもそも、大阪府の子どもの貧困率は21.8%(2012年、全国平均13.8%)と、沖縄に続いて全国ワーストの2位となっている。

 また大阪府が2018年4月に発表した「子どもの生活に関する実態調査」の結果による大阪社会保障推進協議会の分析から、「学校のない日に、昼ごはんを食べることのできない子ども」が全体の20%にも及ぶことがわかった。

 子どもの貧困は、学校現場の荒廃や学力低下に結びつく。2018年春の全国学力テストの結果、大阪市が小・中学校ともに2年連続して政令指定都市で最下位となった。

 これについて、吉村大阪市長(当時)は、この責任を現場の教師へと転化し、学力テストの結果を「校長や教員の人事評価とボーナスに反映させる」とまで言い放った。

北朝鮮以下の大阪メディア

 さらに、このような現実もまとに報じないのが大阪のメディアである。たとえば、2020年4月から2021年5月までの14カ月間で、吉村知事のテレビ出演は143回であった。

多くは地元関西の情報番組である。コロナ対応で多忙な時期に、週2回は出演していた計算となる。

 しかし、その「情報番組」の実態は、”報道”とは程遠いものであった。女性自身によれば、

知事が出演しているのは、主に情報番組。普通、政治を扱うのは報道局なんですが、情報番組はバラエティー番組をつくる制作局が作っています。

という。

 まさに、吉本興業のような関西特有の”お笑い”のノリで、政治を扱う始末なのだ。このような大阪メディアの伝統を作ったのも、橋本徹氏であるという。

 前述した女性自身の記事によれば、

橋下さんは、知事になる以前からタレントとして頻繁に情報番組に出演していたので、当時から親しかった制作局が、府知事になってからも番組を作るようになったんです。

 制作局の人間からすれば“身内”の橋下さんが知事になったわけですから、権力者に対峙するというより、タレントに対し、(がんばってや!)みたいなノリになってしまうのでしょう。そんなメディアとの“共犯関係”を吉村知事も継承したんです。

 というのだ。

 さて、冷静に考えてみよう。たまにテレビに映し出される北朝鮮のニュース映像さえ、きちんとしたオーソドックス「報道のフォーマット」に基づいている。そういう意味では、大阪メディアは、「北朝鮮以下」と断言してもよい。

日本沈没は、大阪から始まる

 基本的に、19世紀と20世紀との違いは、「行政国家」である。警察レベルしかなかった「夜警国家」から、二つの大きな世界大戦を経験し、世界は、年金を整備し、さまざまな社会福祉・社会保障サービスを整備した。

 さらに、公務員を多く採用し、さまざまな行政サービスをと整えていった。ところが日本の公務員の数は、あの「小さな政府」のアメリカの数の半分程度である。

 このことが、結果的に脆弱な行政サービスを生み、そして「何もかも民間任せ」の状況を生みだす。その行きついた先が、日本のコロナ渦における状況であった。

 「世界最大の病床数」を抱えながらも、そのほとんどが公営ではなく、民間病床であったため、すぐにコロナ病床へと転換できない。だからこそ、世界に比べれば”さざなみ程度”の新型コロナウイルス感染者の数であったにもかかわらず、医療崩壊が起きてしまったのだ。

 大阪でさえ例外ではなく、橋本氏は大阪府知事・市長時代に公立病院や保健所を削減したほか、医師・看護師などの病院職員をはじめ、保健所など衛生行政にも携わる職員を大幅に削減した。その結果としての、新型コロナ致死率”ヨーロッパ並み”という現実がある。

 そもそも、「公務員嫌い」というものは、新自由主義思想というよりも、右翼思想に基づく。実際、日本で初めに、公務員バッシングを展開したのは産経新聞であった。

 ともすれば、日本維新の会の躍進による、日本の右傾化はさらなる行政サービスの削減へと進むだろう。

 その行きつく先が”日本沈没”だ。TBSドラマの「日本沈没」は関東地域から始まったが、現実の日本沈没は、大阪から始まっているようだ。

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