米トランプ前大統領に有罪判決 刑事責任を認定した12人の陪審員とは? それでも支持する岩盤支持層

北アメリカ
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Augusto OrdóñezによるPixabayからの画像

 米共和党のトランプ前大統領(77)が、不倫口止め料を不正に会計処理したとされる事件で、ニューヨーク州地裁の陪審団は5月30日、トランプ氏に科された34の罪状について、すべてで有罪とする評決を言い渡す。

  米大統領経験者が刑事事件で有罪評決を受けるのは初めてのこと。

  有罪には、陪審員12人の全員一致が必要。評議は非公開で行われ、評決理由は明らかにされていないが、トランプ氏の行為を、

 「大統領選に不利な証拠をもみ消し、有権者を欺いた」

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 とする検察側の主張を認めたものとなった。

  判事は、量刑を7月11日に言い渡す。禁固刑が科される可能性もあるが、初犯でありトランプ氏が高齢でもあるため、罰金刑や保護観察にとどまると見方が強い2。なお、トランプ氏は控訴した。

  起訴状などによると、トランプ氏は、2016年の大統領選挙の際、不倫スキャンダルをもみ消すため、元顧問弁護士コーエン氏を通じて、不倫相手の女性に対し、口止め料13万ドル(約2000万円)を支払った。

  しかし、その後、コーエン氏に弁済した際、業務記録に「法務費用」と虚偽の記録をしたとし、州法違反に問われた。

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炎と怒り――トランプ政権の内幕
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刑事責任を認定した12人の陪審員とは?

  評決を下した陪審員は、女性5人、男性7人。いずれもアメリカ国籍。判事は、陪審員の氏名などを伏せ、身元を特定されないようにしているものの、しかし選任手続きの過程で、職業や陪審員の考えの一端が明かかに。

  最初に陪審員に選ばれ、陪審長を務めたのは、販売業の男性だった。男性はリベラルな論調のニューヨーク・タイムズ紙だけでなく、保守系FOXニュースからも情報を得ていたとのこと3

  ほか、投資顧問銀行に勤務していたある男性は、トランプ氏のソーシャルメディアのアカウントをフォローしていた4。また、12人のうち2人は弁護士資格を持っており、評議を主導した可能性も5

  選任手続きで、トランプ氏の印象を聞かれた教師の女性は、トランプ氏のことを

 「本音を話している」

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 と好意的に評価していた。

 あるいは、アパレル業で働く女性は、

 (トランプ氏の)「人格が好きではない。一部の政策にも賛成できない」

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 と評する一方、

 (自分は)「トランプ氏の言い分に耳を傾け、公平に判断できる」

8

 と強調する。

アメリカの分断、進む?

 
 有罪により、大統領経験者かつ11月の大統領選で共和党の指名が確定した候補者が「罪人」となる前代未聞の事態に陥った。

 しかしながら、現在、アメリカは政治的分断がいきつくところまで行き、今後の大統領選への影響は限定的との見方だ。

 「トランプ、全罪状で有罪」

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  30日夕、米メディアはこう、見出しを付ける。

  ある調査では、トランプ氏の「有罪」はバイデン大統領に有利に傾く、との見方も。

  米マーケット大が5月下旬に公表した世論調査結果によると、大統領選に向けた両候補の支持率はトランプ氏が40%で、バイデン大統領の37%を上回ていたが、トランプ氏の有罪を想定した場合はバイデン氏が43%、トランプ氏が39%と逆転した。

  トランプ氏は有罪評決に備え、司法制度そのものに対する不信をあおってきた。選挙集会やSNSにおいて、

 「バイデンは政敵の選挙を妨害しようと、司法を武器に変えた」

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 と強調。公判中には、共和党のジョンソン下院議長らが裁判所前に駆け付け、「偽りの裁判だ」と加勢。

 戦略は奏功し、USAトゥデー紙が4~5月に実施した世論調査では、裁判を「不公平」とする回答がトランプ氏支持層で85%にまで上る。

今後の見通し


「本当の評決は(大統領選投開票日の)11月5日に国民によって下される」

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  評決後、トランプ氏はこう、記者団に訴えかける。30日夜には、自身のSNSで、「米国を守れ」12と、投稿した。

  トランプ氏は、判事を「民主党より」となじり、検察官を侮辱。29日には、記者団に対し、公判を

 「マザー・テレサでもこの裁判は勝てない」

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 と訴えた。

  そして評決後、トランプ氏が「私は政治犯だ」14とし、献金を呼びかけると、サイトがパンクする。

  トランプ氏は、この事件のほか三つの裁判を抱えるが、しかし、

 「不祥事が多すぎて有権者の感覚が麻痺している」(米メディア)
 

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との指摘もあり、大勢には影響はない。

 トランプ陣営は、裁判を糧にこれまで疎遠だったマイノリティの取り込みを進めている。実際、黒人有権者に限ってみてもトランプ支持が17%にまで増えたという調査結果もある。

  トランプ氏にとって、

「不当な司法手続きに苦しめられている点で自分と黒人は同じ」

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なのだ。

  1. 古川幸太郎「トランプ氏に有罪評決」西日本新聞、2024年6月1日付朝刊、1項
  2. 古川幸太郎、2024年6月1日
  3. ニューヨーク=共同「公平貫いた12人の陪審員」西日本新聞、2024年6月1日付朝刊、3項
  4. ニューヨーク=共同、2024年6月1日
  5. ニューヨーク=共同、2024年6月1日
  6. ニューヨーク=共同、2024年6月1日
  7. ニューヨーク=共同、2024年6月1日
  8. ニューヨーク=共同、2024年6月1日
  9. ワシントン=時事「米大統領選に一定の打撃 分断社会、影響限定的の見方も―トランプ氏に有罪評決」2024年5月31日、https://www.jiji.com/jc/article?k=2024053100728&g=cyr
  10. 時事、2024年5月31日
  11. 古川幸太郎「「トランプ有罪」読めぬ風」西日本新聞、2024年6月1日付朝刊、3項
  12. 古川幸太郎、「トランプ有罪」読めぬ風」
  13. 古川幸太郎、「トランプ有罪」読めぬ風」
  14. 古川幸太郎、「トランプ有罪」読めぬ風」
  15. 古川幸太郎、「トランプ有罪」読めぬ風」
  16. 六辻彰二「2024米大統領選の異変――差別的発言を繰り返したのに…トランプ支持の黒人が増加する理由」Yahoo!ニュース、2024年5月31日、https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8141efaf65d72e2def8daa39139e7b0a329109c6
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