5~11歳の子どもへも新型コロナウイルスワクチン接種へ

医療
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cromaconceptovisualによるPixabayからの画像

 厚生労働省は1月20日、米国ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンを、5〜11歳の子どもにも接種できるよう特例承認する方針を決めた。 

 この日に開かれた専門部会で安全性と有効性を審議し、承認が了承。今後、厚労省のワクチン分科会で実施要領などの検討を経て、今年3月以降に接種が始まる見通しだ。

 ファイザーは昨年11月、この年齢層への接種の拡大を申請していた。海外でもすでにこの年代への接種が始まっているが、日本では5〜11歳に打てる初めてのワクチンとなる。

 新たに対象となるのは、約700万〜800万人に上る。しかし、子どもへの接種をめぐっては、感染しても重症化しにくいことから、専門家の間でも接種の必要性に関しての意見は分かれる。

  厚労省によると、ワクチンの有効成分12歳以上の量の3分の1であり、子ども用は別製品。そのため、同一での接種会場で12歳以上のワクチンを扱う場合は、打ち間違いに注意が必要となってくる。また、3週間の間隔で2回接種する必要がある。

 海外の臨床試験では、発症予防に90.7%の効果が確認された。厚労省は、オミクロン株にも一定の有効性が期待できるとする。

 海外では、すでにこの年代への接種も始まっている。米国では、接種後に起きた副反応のほとんどが、軽症や中等症であったと報告されている。

 国内では、接種後の若年男性に心筋炎や心膜炎がごくまれに報告されており、5〜11歳についても添付文書などで注意喚起する。

 岸田首相は今月、「12歳未満の希望者にできるだけ早く接種を開始する」と語っていた。

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決定の背景

 このような決定はなされた背景には、オミクロン株が広がってくるようになり子どもの感染者も急増、それとともに学校の休校などの影響を出始めたからだ。

 しかしながら、子どもが感染してもこれまでと同じく無症状や軽症が多く、重症化はまれ。そのため、専門家は重症化リスクにつながりやすい持病の有無や副反応のリスクも踏まえた判断が重要だとする。

 ただ、オミクロン株の影響とみられる感染の拡大は、実際に子どもたちへ及んでいる。 和歌山県岩出市では、バレーボールの練習試合で小学生に感染が広がり、実に6校が今月24日まで休校、児童約3000人が自宅学習となる。

 厚生労働省によると、10代以下への感染者はオミクロン株が広がり始めた昨年12月末から増え、今年1月12日~18日には約3万9000人に上る。ちなみに、昨年夏ごろの第5波のピーク時は1日約2万9000人であった。

 現在、国内でワクチンを接種できるのは12歳以上。5~11歳に導入されれば、小学生全体をカバーできることになる。

専門家の意見は分かれる

 だが、子どもの感染者数が増加するなかでも、重症者数はほとんど報告されていない。富山大学の種市尋宙講師は、「流行そのものを抑えることを目的とするなら、大人への追加接種を先に進めるべきだ」とし、「今の流行状況では、健康な子どもに急いでワクチンを打つ必要なない」(西日本新聞1月21日朝刊)とする。

 一方、日本小児科学会は、5~11歳へのワクチン接種については、持病がある子どもは感染時の危険性が増えるとの報告があり、ワクチンにより「重症化を防ぐことが期待される」とし、優先的に接種することを促す。また健康な子どもたちへの接種についても「意義がある」とした。

 文部科学省は学校でのワクチン集団接種については否定的な立場を取る。昨年6月には、主に中学校や高校生を対象にいじめや差別が起こる懸念があると、集団接種を「推奨するものではない」との方針を表明、文部省幹部も、「小学生では一層、慎重にならざるを得ない」と話す。

 小児科学会の提言は、接種のメリットとデメリットを本人と保護者が理解し、接種中やその前後に「きめ細かな対応が必要だ」とした。

海外での動き

 海外の動向はどうか。欧米諸国では、すでに日本に先駆けて5〜11歳の子どもでのファイザー製新型コロナウイルスワクチンの接種が進んでいる。しかしその対応は分かれている。

 感染力の強いオミクロン株の流行により子どもの入院が増えた米国では、条件を設けずに接種を推奨する一方、ドイツなどでは重症化リスクが高い子どもに限定して接種を推奨。フランスも同様の立場だ。

 しかし米国メディアによれば、さらにその下の世代である4歳以下にも接種を拡大することも検討している。ただ、その米国内においても、19日時点で接種を完了した5〜11歳は2割を下回っている。

 コロナ禍で世界に先駆けてワクチン投与をおこなってきた「ワクチン接種国」でもあるイスラエルでも子どもへの接種は伸び悩む。さらに政府の強引的な進め方に反感を持ったり、将来的な影響を心配したりする保護者は多いようだ。

 英国では、大半の子どもは深刻な病状に至る可能性は低いとし、重症化リスクが高い子どもへの接種を優先している。

第5波の時期では、保護者7割超が「希望」

 国立成長医療研究センターの調査によると、新型コロナウイルスのワクチン接種について、小学生の保護者の7割超が子どもへの迅速な接種を求めていた。

 小学生自身への調査についても過半数が「すぐに受けたい」と回答している。その理由は、家族や友人への感染拡大防止などが理由・

 調査は昨年9月、デルタ株のまん延による第5波の流行を受けて行われた。小学生1年〜高校3年の1271人と保護者5807人が回答した。

 具体的な数字としては、保護者では小学生1〜3年生の71%、4〜6年生の76%が「すぐに受けさせたい」と答える。その理由としては、「祖父母に合わせたい」などが理由だ。一方で、副反応への懸念から接種に慎重な意見もあった。

 小学生の間では、55%が「接種をすぐに受けたい」と回答、内訳は、1〜3年生が50%、4〜6年生は60%である。接種を受けたい理由としては、「家族や友達にうつしたくない」などが多かった。一方、接種を望まない理由としては、「注射時の痛み」などがあった。

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