オミクロン対応新ワクチン すべての住民対象へ 10月にもスタート 世界でも 一方、日本政府はモデルナのワクチン工場を日本へ誘致

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 新型コロナウイルスのワクチンについて、新たな動きがあった。厚生労働省は8日、コロナワクチンのオミクロン株に対応した新しいタイプのワクチンを、10月の半ばまでにも接種の開始することを決定。

 対象となるのは、少なくとも2回の接種を終えたすべての住民を想定する。また接種への協力を求める「努力義務」の範囲を、これまで対象外だった5歳~11歳にも適用させる。同日に開かれたワクチン分科会により、了承された。

 使用されるワクチンは、オミクロン株の派生型である「BA.1」と、従来の株由来の成分の2種類を含むワクチン。

 これらのワクチンは、「BA.5」に対してもウイルスの働きを押させる「中和抗体」の量が増えるとの報告があり、これまでのワクチンと比べて高い効果が期待されている1

 使用される開発中のワクチンは、アメリカのファイザーが8日、厚労省に承認を申請。モデルナも今後、申請するという。

 厚労省によると、モデルナ製の場合、BA.1に対する中和抗体の量は、従来型のワクチンと比べ1.75倍に上昇。BA.5に対してはこれより下がるものの、一定の上昇は見られたする。

 製薬会社はBA.5由来のワクチンの開発も進めているものの、供給が遅くなるとみられ、厚労省はBA.1由来のワクチンを採用することにした。

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 WHO(世界保健機関)は、従来のワクチンでもオミクロン株を含むすべての新型コロナウイルスに対して、とくに「高い重症予防効果」があるとする2

 しかし、従来型のワクチンでは、オミクロン株への感染や発症予防の効果が低いほか、接種をしてから時間が経てば経つほど、効果も弱まる。

 そのため、ファイザー社やモデルナなどがオミクロン株へ対応するワクチンの開発を進めていた。

 8日、厚労省は分科会を開催。ここで、国内で流行しているオミクロン株に対応したワクチンの接種について審議。

 その結果、高齢者の重症化を防ぐとともに、若い世代も含めすべての世代の免疫を上げるために、オミクロン株に対応したワクチンを、2回目までの接種を終えたすべての人に対し、10月中旬をめどに開始することを決めた。

 ただ、前回の接種とどの程度間隔をあけるのかについては分かっていないため、分科会では専門家からは、

「オミクロン株に対応するワクチンを打つために10月まで接種を控える動きが広がる懸念がある」

「重症化を防ぐため、対象者で接種がまだの人は速やかに4回目の接種を受けてほしい」

NHK首都圏ナビ、2022年8月9日

などの意見も出た。


世界の動き イギリス 世界で初めてオミクロン対応型ワクチンを承認 オーストラリアやカナダ、EUでも

 世界の動きはどうか。イギリス政府は15日、新型コロナの従来株とオミクロンの変異株に対応した2価ワクチンを承認3。同タイプのワクチンの承認は世界初。

 イギリスの医薬品・医療製品規制庁(MHRA)によると、ワクチンはアメリカのモデルナ製のものであり、成人を対象とする。イギリスは、9月から追加接種(ブースター)キャンペーンを行う見通し。

 イギリス政府の諮問機関のワクチン・予防接種合同委員会(JCVI)は、追加接種を50歳以上や、高リスクの人を対象にするよう提言している。

 また英国保健安全保障庁(UKHSA)の試算によると、これまでに少なくとも2回の接種を終えた2600万人が対象となるという。さらに現在主流となっている「BA.4」と「BA.5」に対しても、

「良好な免疫反応」

がみられたことが、予備的な分析で示されたとする。

 モデルナはイギリス以外にも、オーストラリアやカナダ、EU(欧州連合)においても、今後数週間で承認される見込みであるという。

 ただ、アメリカでは、FDA(米食品医薬局)は今後、米国内で使用されるワクチンについては、BA.4とBA.5に対応させるよう求めている。

 なお、アメリカのファイザー社とドイツのビオンテック社もオミクロン株対応のワクチンを試験中だ。

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モデルナ工場 日本が誘致へ


 一方、モデルナのワクチン工場を誘致する計画が政府と自民党内で浮上している4。ただ、モデルナは工場で製造されるワクチンを、政府が一定期間、購入することを条件としている。

 新型コロナ以外の新たな感染症がもし流行してもワクチンを速やかに供給できる「メリット」が期待できる半面、ワクチンの購入費が数千億円規模にものぼるなど「デミリット」も。

 もともと、昨年冬の段階で、モデルナはメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの生産拠点を日本で立ち上げる検討に入っていた5

 モデルナは昨年4月に日本法人を設立、事業活動を開始している。モデルナが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンはウイルスの遺伝子の一部を人工的に利用するため、「遺伝子ワクチン」とも呼ばれる。

 ウイルスの設計図である遺伝子のmRNAは人工的に合成でき、これまで10年はかかるとされてきたワクチン開発が1年未満で完成するなど、短期間で済む。

 ただ、日本国内のメーカーでは製薬大手の第一三共が実用化を目指してはいるものの、実現はしていない。

  1. 西日本新聞8月9日付朝刊 
  2. NHK首都圏ナビ「オミクロン株対応 2価ワクチンとは 接種対象や効果 いつから打てる?」2022年8月9日、https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20220809a.html
  3. REUTERS「英、オミクロン対応2価ワクチン承認 世界初 モデルナ製」2022年8月15日、https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-britain-vaccine-idJPKBN2PL120
  4. 矢澤秀範「新型コロナ モデルナ日本工場浮上 政府・与党、ワクチン迅速供給狙い」毎日新聞、2022年8月12日、https://mainichi.jp/articles/20220812/ddm/002/040/107000c
  5. 赤羽環希「モデルナ、mRNA原薬 日本生産へ自社工場検討」化学工業日報、2021年12月21日