Thomas MalyskaによるPixabayからの画像
衆議院の小選挙区の「10増10減」で新設される「東京都28区」(練馬区東部)の候補者調整について、公明党は25日、次回の衆院選で28区への候補者の擁立を断念する代わりに、東京の小選挙区の自民党候補を推薦しない方針を自民党側に伝えた。
28区への擁立方針を自民党側が拒否したことを受け、事前通告通り推薦の見送りに踏み切った形だ。自公の選挙協力がここまで悪化するのは極めて異例で、連立政権の運営に支障が起きる可能性も。
今回の事態は、自民党と公明党とのパイプが不在となっているのに加え、”公明票頼み”の自民党への不信感が高まり、公明党が強気の交渉に出た結果でもある1。ただ、今後の自公の協力関係の見通しが不透明に。
そもそも、東京の選挙区は誤算続きだった。公明党は1月に東京12区選出の岡本三成衆院議員が東京29区に「くら替え」すると発表。
公明は、区域が重複し理解を得やすいと考えていたものの、自民党都連は、「岡本氏を応援できない」と反発。
公明党は、区割りの変更にともない新設される選挙区の擁立を数年前から求めていた2だけに、またとないチャンスだった。また、そもそそ、「選挙区は自民、比例は公明」という従来の選挙協力への不満を根強かった。
20年あまりの蜜月 崩壊寸前?
自公連立政権が誕生したきっかけは、1998年に遡る。
参院選で自民党が惨敗、参議院で、過半数を下回った「ねじれ」の状態で発足した当時の小渕恵三政権は、小沢一郎衆院議員率いる自由党(当時)と連立を組み、公明党を連立に引き入れた。
それが、1999年10月に誕生した「自自公」連立政権だ。1964年に結党さされた公明党は中道政党として、宗教団体の創価学会を支持母体にもつ。
自民党との連立後は、創価学会の集票力を背景に、選挙区で組織票を自民党に提供。代わりに、比例票を公明党から振り分けてもらう「すみ分け」で選挙における協力を深めてきた。
ただ、徐々に対立が先鋭化。第二次安倍政権下では、集団的自衛権の行使容認をめぐり、創価学会内に反対論が広がる。
2020年には、新型コロナ禍出の給付金をめぐり、当時の岸田文雄政調会長が主導した「減収世帯への30万円給付」に反対。
公明党の山口那津男代表が、「国民に「一律10万円給付」するよう迫り、
「決断しないと政権が厳しい」
3
と連立離脱の可能性もちらつかせる。
昨年夏の参院選前の補正予算の是非をめぐっても、自公の足並みが揃わず、慎重な自民党に対し、公明党が執拗に迫った一幕も。
それとも単なる脅し?
ただ、自民党側は表向きは冷静に受け止めているという。推薦を盾に譲歩を迫る公明党の手法は、公明党と支持母体の創価学会側が過去にも用いてきた手段だからだ。
2021年の衆院選では、公明党が広島3区に候補者を擁立したが、当初、自民広島連が反発。広島は岸田首相の”お膝元”であり、岸田派議員が多い。そのため、創価学会幹部が岸田派の議員に対し、
「ちゃんと3区を手伝ってくれないと今後あなたたちを支援できるかわからない」
4
と推薦見送りを示唆した。
昨年の参院選も一部の選挙区で互いの候補を推薦する「相互推薦」について、公明党が見送る可能性を示し、交渉は一時暗礁に乗り上げる。
ある公明党の衆院議員は、
「自民を脅したら妥協してくれたのが成功体験になっている」
2
と指摘。別の公明党の関係者も、
「これで3回目だ。うちの組織は一体どうしてしまったのか」
2
と嘆く。
ただ、現実として、次に控える衆院選で公明党が各選挙区で持つとされる
「1万~2万票」(自民幹部)
2
を見込めない可能性もあり、戦々恐々としている自民党議員も少なくないとも。
気になる今後の行く末
一方で、連立を組む自民党としても複雑だという。党総裁の岸田首相の下における選挙責任者である茂木敏充幹事長はもともと、公明党と創価学会ともにパイプがない5。
そのようななか、岸田政権下で憲法改正を狙う自民党としては、
「この際、改正に慎重な公明を切り捨て、維新と組んではどうか」
6
という声まで飛び出す有様だ。
この動きに異を唱えているのが、前の首相である菅義偉氏と二階俊博元幹事長であるというが8
と述べたものの、建立をめぐり、複数の現職市議による寄付は、政治家による選挙区内の寄付を禁じた公職選挙法に違反する疑いがあると報じられ、該当の寄付が返金されるなどのケチがついた。
- 御厨尚陽「自公、深まる亀裂」西日本新聞、2023年5月26日付朝刊、3項
- 御厨尚陽、2023年5月26日
- 藤原慎一「組織票と比例票 すみ分けで協力」朝日新聞、2023年5月26日付朝刊、2項
- 磯部佳孝「「1万~2万票」動揺も」朝日新聞、2023年5月26日付朝刊、2項
- 森功「維新躍進で大阪政界に大激震!菅義偉と二階俊博が自民党中枢の「創価学会切り」に反発して泥沼化する権力闘争」Yahoo!ニュース、現代ビジネス、2023年5月5日、https://news.yahoo.co.jp/articles/51fc2b64b1c4f5769b0164b4d80f5a7d88a1a0ff?page=1
- 森功、2023年5月5日
- 森功、2023年5月5日(10)、話しはより複雑さを増し、権力闘争まで発展する勢いだ。
そのうちの1人、菅前首相は、27日出身地の秋田県湯沢市を訪問、自身の胸像をの除幕式に出席、
「秋田出身を誇りに、国政に取り組んできた。『ふるさと納税』は秋田出身でなければできなかった」
7松山紫乃「菅前首相、出身地・秋田に1.5倍の胸像 「ふるさと誇りに国政」」朝日新聞デジタル、2023年5月27日、https://digital.asahi.com/articles/ASR5W5HM0R5WUTFK008.html