政治倫理審査会、本当に開催される? 実効性は? 繰り返される「記憶にございません」の源流

政党
スポンサーリンク

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 自民党の派閥に関連する政治資金パーティーの裏金化問題を受けて、衆議院の政治倫理審査会(政倫審)が、28日と29日に開催される予定だったが、公開の方法について与野党間で合意が得られず、28日の開催は見送られることに。

 与野党は、自民党の安倍派と二階派の事務総長を務めた5人からの提案を受け、28日と29日に審査会を開催する調整を進めていた。

 しかし、公開の形式に関しては、与党が冒頭のみカメラでの撮影を提案したのに対し、野党は審査全体の撮影や中継を求め、意見が一致しない1

 その後、自民党から28日の審査会に2人が出席しない旨が伝えられ、結果として28日の開催は見送られることに。

 一方、参議院では27日に、1985年の設置以来初めてとなる政倫審が開催。審査を受けることとなったのは、自民党の安倍派の世耕弘成前参院幹事長ら31人と、自民党を離党した大野泰正参院議員の計32人2

 しかし、この日の政倫審の傍聴は議員と報道関係者に限られ、公開されたのは10分弱だった。

関連記事→

Amazonプライム

スポンサーリンク

政治倫理審査会とは?

 政治倫理審査会(政倫審)は、議員が自ら出席して政治資金や他の疑惑について説明する場。今回の問題で、18年ぶりに開催されるが、基本的には非公開で出席の義務もない。

 政倫審が初めて設置されたのは1985年で、「ロッキード事件」がそのきっかけ。この事件では、米国のロッキード社が旅客機を売り込むため、田中角栄元首相らに賄賂を渡した。

 そして田中氏を師と仰ぐ、小沢一郎衆院議員らが中心となり、与野党の「政治倫理協議会」で議論し、1985年に国会法を改正して政倫審の設置が決まる。

 最初は委員の3分の1が申し立てた場合にのみ開催されていたが、後に議員本人の申し出でも開催できるように。

1996年には、自民党の加藤紘一氏の共和汚職事件をめぐる闇献金疑惑に関連して、政倫審が初めて開催され、それ以来、衆議院での開催は9回に及ぶ。

 2009年には、民主党代表であった鳩山由紀夫氏の個人献金偽装問題をめぐる審査だけが、政倫審委員の申し立てで開催。しかし、鳩山氏が出席を拒否したため、実質的な審査は行われなかった3

実効性はある?

 上記の鳩山氏の事例と同様、政倫審は予算委員会などでの証人喚問とは違い、罰則も強制力も伴わないため、実効性がないとの指摘も根強い。
 

 そもそも、自民党は政倫審の開催事態、消極的だ。ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、東京新聞の取材に対し、

「参考人招致や証人喚問をさせないための国会対策戦術だ。政倫審が厳しい場であるかのような印象を抱かせ、落としどころとして、追及の甘い政倫審の開催で野党と手を打つつもりでは」

4

と指摘する。

とはいえ、過去に政倫審で弁明後、議員辞職したのは秘書給与疑惑を追及された田中真紀子氏(当時自民)のみ。審査の結果、一定期間の登院自粛や国会の役職の辞任などを勧告できるが、こちらも実施された例はない。

 結局は、世論の「ガス抜き」を狙い、「やってる感」(鈴木氏)5というのが実像だ。

 政治資金規正法の「規正」が「規制」でないのは、「自ら正す」を理念としているためだというが6 、今の政治家にそれを求めること自体、バカらしい。

「記憶にございません」

 付け加えておくならば、今回の裏金事件の問題においても、政治家が、

「記憶にございません」

と述べたことは、本当に腹立たしい。

 昨年12月15日、安倍派所属の鈴木淳司前総務相が記者団の取材に応じ、

「派閥から収支報告書に記載するなという指示はあったのか?」

という記者団の問いかけに対しては、

「そういう記憶は本当にない」

と述べた7

 「記憶にございません」といえば、8日に開かれた衆院予算委員会では、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)側との接点が指摘されている盛山正仁文部科学相が午前中の審議だけで10回以上、この言葉を連発した。

 「記憶にございません」というせりふは、ロッキード事件の真相究明を図るための国会の証人喚問において、宣誓下で虚偽答弁をすれば議院証言法違反に問われることを恐れた国際興業の小佐野賢治社主が連発したことで有名に。

 しかしながら、当時それは、ロッキード事件のような戦後史に残る大疑獄事件で、なおかつ当時児玉誉士夫氏と並ぶほどの”政商”とまで呼ばれた小佐野氏のような人物が初めて口にできた迷言だった。

 今回のような、鈴木・盛山ごとき”小悪党”どもが口に出してよい言葉ではない。

  1. NHK NEWS WEB「衆院政倫審 あすの開催見送り 公開の是非めぐり折り合いつかず」2024年2月27日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240227/k10014372361000.html 
  2. 我那覇圭、山口哲人「「参院政倫審」を初開催 世耕弘成氏ら自民議員32人の不記載は「政治への信頼損ねる」と野党が指摘」東京新聞、2024年2月27日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/311817 
  3. 森本智之、岸本拓也「疑惑議員自ら弁明する「セイリンシン」で裏金問題は全容解明されるのか 神保町で聞いた1番出席してほしい議員はあの権力者」東京新聞、2024年2月15日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/309310 
  4. 森本智之、岸本拓也、2024年2月15日 
  5. 森本智之、岸本拓也、2024年2月15日 
  6. 星野典久「政倫審の公開拒む自民 ガバナンス不全、説明責任そっちのけの迷走」朝日新聞デジタル、2024年2月27日、https://digital.asahi.com/articles/ASS2W72C5S2WUTFK018.html 
  7. 朝日新聞デジタル「「文化という認識」「存在を忘れるくらい」鈴木前総務相が裏金明かす」2023年12月15日、https://digital.asahi.com/articles/ASRDH6T5VRDHUTFK00V.html  
Translate »
PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました