「永遠の化学物質」 PFAS、懸念広がる 米軍基地でも 半導体にも使用 

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Susan WangによるPixabayからの画像

 ここ数年で、「PFAS」という言葉をよく聞くようになった。PFASは、「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物」(英称: Per- and Polyfluoroalkyl Substances)という長い名前の略で、有機フッ素化合物の一種。

 フッ素原子が多数結合した化合物のグループを指し、人工的に作られたもので4000種類以上が存在する。

 PFASは、水や油を弾く力や耐熱性が高いため、食品の包装材料や衣類の撥水処理、消火剤、半導体の製造など、さまざまな場面で利用されてきた。

 しかし、PFASの中には健康に害を及ぼすものがあり、がんのリスクや免疫力の低下、コレステロール値の上昇、生まれてくる子供の発育への影響などが問題視。そのため、国際的に規制の対象となるものがでてきた。

 PFASの問題は、2000年頃からアメリカで相次いだ訴訟によって広く知られるようになる。

 工場から川に流出したPFASが原因で住民が健康被害を受けたり、水源が汚染されたりしたためで、製造会社が巨額の賠償金を支払って和解する事態も発生した。

 これと並行して疫学調査や科学的な研究も進み、膨大な種類があるPFASのうち、泡消火剤などに使われてきたPFOSと、フッ素樹脂の加工などに使われたPFOA、さらにこれらの代替品として使われてきたPFHxSと呼ばれるものは、国際条約で順次規制。

 日本でも法律で製造・輸入などを原則禁止にしてきた。

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永遠の化学物質

 PFASは、しばし「永遠の化学物質」と呼ばれる。一度環境に放出されると、なかなか分解されずにずっと生態系内を循環し続ける性質があるためだ。

 この性質のために、土や農作物、地下水、水道水、魚など、私たちが日常的に摂取する多くのものがPFASで汚染されるリスクが。

 このような状況を避けるためには、PFASが人間の体内に入らないようにするための規制が必要だ。また、これ以上新しいPFASが生産されないように、国際的な取り決めを作ることが急務となる。

 PFASの中でも、特に問題とされているのがPFOAとPFOSという2種類の化学物質。これらは8個の炭素とフッ素が結びついてできており、他のPFASと同様に非常に安定しており、簡単には分解されない。

 さらに、これらの化学物質は脂肪酸に似た分子構造をしているため、体内に取り込まれやすく、有害であるにもかかわらず体が積極的に吸収してしまう。

  そして、これらの化学物質は尿を通じて体外に排出されにくいため、体内に長期間留まり、さまざまな健康問題の原因となり得る1

 日本では、『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』とともにPFAS汚染が注目された。

米軍基地でも

 日本では、東京・多摩地域での出来事がPFASに対する関心も高めた。ここでは、飲料水の供給源である井戸水からPFASが高濃度で見つかり、地元の市民団体による血液検査では、多くの住民の血中に健康に害を及ぼす可能性のある濃度のPFASが確認される2

 「この資料に、800ガロン(約3000リットル)の漏出の事実がはっきり書いてある。これを見れば、横田基地が汚染源の一つになっていると考えないわけにはいかない」

3 

  昨年の5月、川崎市で英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏(48)が取材に答え、2018年にアメリカ政府から情報公開請求で入手した米軍の文書を公開。

  これは「USFJ SPILL REPORT(在日米軍漏出報告書)」と題され、A4サイズで750ページにも及ぶ。

  報告書は「泡消火剤の貯蔵タンクの中身が空になっているのを消防隊員が発見した。ゆっくりとタンクから漏れ出し、床の接ぎ目から土壌に浸透したようだ」と説明していた。

  PFASを含む泡消火剤は、航空燃料が原因の火災に対処するのに有効で、1967年に米軍の空母で発生した火災以降、空軍基地や国内の空港で広く使用されてきた。

半導体にも使用

 PFASは、フライパンのコーティングや半導体、電気自動車(EV)など多岐にわたる製品に使用されているが、その安全性については欧州を中心に規制が強まっている4

  特に「PFOS」とPFOA(ピーフォア)」の2種類は、体に取り込むとがんを含む健康問題を引き起こす可能性があるため、日本政府は2021年までにこれらの物質の製造や輸入を禁止。

  日本国内でも、化学工場の周辺水路で許容値を大幅に超えるPFASが検出されたことがある。

 現在、メーカーはまだ有害性が確認されていないPFASを使用しているものの、欧州ではすべてのフッ素化合物の製造や使用を段階的に廃止する議論が進む。

  このため、2020年代後半にはPFASを含む製品の欧州への輸出が難しくなる可能性も。

  国内では、三重県四日市市にある世界大手の半導体製造会社キオクシアの工場から、国の暫定指針値の2.6倍ものPFASが排水口から検出された5。工場は、国から929億円の補助金を受け取っている。

  キオクシアは、「フラッシュメモリー」など情報記憶の半導体メモリーの売り上げで国内最大手だ。

  1. マル激トーク・オン・ディマンド 「「永遠の化学物質」汚染の拡大を止めよ」ビデオニュース・ドットコム、2021年12月25日、https://www.videonews.com/marugeki-talk/1081 
  2. 松島京太、岡本太、昆野夏子、渡辺真由子「「PFAS汚染源」はどこだ 米軍内部文書から見つかった事実…疑念呼ぶ「横田の3000リットル」」東京新聞、2023年6月11日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/255950 
  3. 松島京太、岡本太、昆野夏子、渡辺真由子、2023年6月11日 
  4. 読売新聞オンライン「半導体やEVなどで使用の「PFAS」、毒性への懸念高まる…欧州は規制強化へ」2023年11月27日、https://www.yomiuri.co.jp/economy/20231126-OYT1T50195/
  5. 日隈広志「国が巨額支援の半導体企業 PFAS汚染源か」しんぶん赤旗、2024年1月23日、https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2024-01-23/2024012301_01_0.html 
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