旧統一教会に解散命令請求 民法根拠、初めて 1990年代に一時、請求検討

宗教
スポンサーリンク

sspiehs3によるPixabayからの画像

 12日、盛山正仁文部科学相が記者会見し、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散命令請求を決定したと明らかに。

 政府は、質問権行使により集めた資料や被害者の証言などから、不当な献金集めを、「教団の業務、活動して行った」と認定。

 不法行為の「組織性、悪質性、継続性」があり、解散命令の要件を満たすと判断した。

 一方、教団側は信者に対し、今年の9月以降は、献金は、教団本部がある韓国に対し、日本円を現金で持参するよう通達していたことが判明1。政府が請求する解散命令が裁判所で確定すれば、教団の所有財産は精算される。

 識者は、

「命令確定を見据え、精算から免れようとしているのでないか。組織として指示し、全国的な動きである可能性が高い」

2 

とする。

 本来、解散命令があれば、教団の財産は精算後に債権者や被害者に分配される。しかし裁判所の判断まで時間がかかり、教団が財産を移す恐れがある。

 立憲民主党は、財産保全のための特別措置法案を、20日に招集される臨時国会に提出する構え。

 教団側は、今回のような民法の不法行為は法令違反に当たらず、質問権行使自体が違法であると主張。

「極めて残念であり、遺憾。偏った情報に基づいて、政府がこのような重大な決断を下したことは痛恨の極み」

1 

とする。

 政府は、今回の決定により、教団との決別を宣言し、問題の幕引きを図ることで、支持率低迷が続く岸田政権の浮揚を改めて、目指す。

 とはいえ、自民党と旧統一教会との問題は、戦後政治そのものの“インフラ“として深く根を張る問題だ。教団だけでなく、自民党という組織のあり方も問われている。

関連記事→

スポンサーリンク

民法根拠 初めて

 行政機関が法令違反を根拠に解散命令を請求するのは、オウム真理教、1999年の明覚寺に続き3例目。しかし民法上の不法行為がその根拠となるのは、初めてとなる。

 さらに不法行為の根拠として、

1.教団の教義と明らかにせずに伝道行為を行った。

2.先祖の因縁により重大な不利益を被るなどと告げる、いわゆる「因縁トーク」で不安をあおった。

3.不相当に高額な献金をさせた。

3 

の3つの手法があったとする.

 文科省はさらに以下の点を示したうえで、被害の規模が「相当甚大だ」と強調。

◆民事裁判32件の判決
▽被害者…169人
▽被害の総額…およそ22億円
▽1人あたりの平均金額…およそ1320万円

◆和解や示談が成立した人も含む全体
▽被害者…およそ1550人
▽解決金などの総額…およそ204億円

4 

 具体的な事例もあげている。

 『過度な経済的負担』の例として、「家族や会社などに無断で、資産を献金などに費やした」ケースや、「生活に困窮した結果、借金や家財道具の質入れを余儀なくされた」ケースなどをあげている4

 文部科学省は、こうした事実をもとに、宗教法人法で定められた解散命令の事由のうち、次の2つにあたるとする。

▽教団の行為が、民法上の不法行為に該当し被害が甚大であることから、解散命令の事由の1つである「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に該当

▽教団が財産的利得を目的として献金の獲得などにあたり多くの人に財産的、精神的犠牲を余儀なくさせたことは、生活の平穏を害し公益的役割に反しているとしてもう1つの事由である「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」にも該当する

4 

1990年代 請求検討


 一方、政府は1990年代に少なくとも2回、国会議員の問いに答える形で統一教会の解散命令請求に言及していた。

 1994年6月、当時の社会党の参院議員、北村哲男氏は政府への質問主意書で統一教会に言及。

 同年7月、村山富市首相名の答弁書で「(当時の)所轄庁である東京都知事は、請求を行うべき場合にあたるとは判断していない」と回答。

 しかし文部省(当時)が所轄庁ではなかったこともあり、問われた政府の見解は触れなかった5

 4年後、今度が国会質疑で取り上げられる。1998年4月の衆院法務委員会で、木島日出夫氏(共産党)の「この組織をどう認識しているのか」との問いに、文化庁宗務課長はこう答弁。

「解散命令請求にあたるようなところまで至っているという判断はしていない」

2 

 そして当時、宗務課長として答弁に立ったのが、のちに文部科学次官になった前川喜平氏だった。

 前川氏によると、すでに教団側の責任を認めた民事判決があり、「法令違反」はあったと認識していたというが、「公共の福祉を著しく害すると明らか」であると示すには判決の数が足りないと考えていたという2

 ただ、その後、霊感商法をめぐる民事訴訟で教団の責任を認める判決が出るなど、判例も増えていく。2009年には霊感商法をした教団関連会社の社長らが逮捕、有罪判決を受けた「新世事件」も起きた。

 前川氏は昨年、東京新聞の取材に対し、

「09年以降は教団が『コンプライアンス宣言』して集金の仕組みが変わったものの、それまでの違法行為がなくなるわけではない。10年ごろには解散命令請求できる材料が集まっており、請求すべきだった」

6

と指摘する。

「統一教会と接点」 細田衆院議長、辞任

 一方、細田博之衆院議長は、13日に健康上の問題を理由に議長職を辞任することを表明。しかし、議員活動は継続し、次期衆院島根1区からの立候補意向も示す。

 細田氏は昨年9月29日に、教団との接点があったことを認める文書を公表。文書では、関連団体の会合に4回出席し、また「日本・世界平和議員連合懇談会」名誉会長に就いていたことが明らかにした。

 時細田氏が公表した文書はA4判1枚。関連団体の会合には2018〜2019年に出席し、そのうち教会の総裁が参加した2019年10月の国際会議では「あいさつした」と記す。

 議員懇談会に関しては、2021年6月の名誉会長就任を認める一方、経緯などには触れず、「その後の活動状況は承知していない」と説明するにとどまる7

 今回の会見をめぐっては、衆院秘書課が11日、「取材ルール」を提示。

・時間は30分
・質問できるのは衆院記者クラブなどの加盟社かつ各社1人
・会見の撮影は冒頭のみ

8 

との制限をつけたため、紛糾。

 結果、クラブ関係者以外の参加や会見全体の撮影は許可されたものの、会見は原則30分、各社1人の参加などの制限は撤廃されなかった。

 衆院議長は、「国権の最高機関」であり、「国の唯一の立法機関」である国会の衆院のトップ。首相や最高裁判所長官、参院議長ともに「三権の長」と呼ばれる。

 そのような立場にある人物が、”ジャニーズ事務所以下”の記者会見をし、疑惑から逃げまくる。この国の”権威”がまた下がった。

  1. 小川俊一「教団「献金は韓国に持参を」西日本新聞、2023年10月13日付朝刊、1項
  2. 小川俊一、2023年10月13日
  3. NHK NEWS WEB「旧統一教会の解散命令を東京地裁に請求 文科省」2023年10月13日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231013/k10014223981000.html
  4. NHK NEWS WEB、2023年10月13日
  5. 朝日新聞デジタル「政府、統一教会の解散請求しなかった過去 90年代に複数回言及」2023年10月13日、https://digital.asahi.com/articles/ASR9Z6K7DR9ZUTIL013.html
  6. 東京新聞「旧統一教会は本当に「解散」させられないのか? 「信教の自由」と現行法の課題から考える」2023年10月13日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/207824/2?rct=tokuhou
  7. 我那覇圭・佐藤裕介「細田博之衆院議長、旧統一教会との接点認める 会合4回、議連名誉会長…文書1枚公表、会見なし」東京新聞、2022年9月29日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/205489
  8. 国吉美香「会見制限 最後は打ち切り」朝日新聞、2023年10月14日、4項
Translate »
PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました